「水素の町」を構想する福島・浪江町の理想と現実 震災復興の住民は割高コストを受け入れるのか
東洋経済オンライン / 2024年4月4日 8時0分
町で水素の利活用に向けた意識醸成を担っているのが、総合商社の住友商事だ。浪江町役場の職員と住友商事の社員が海外で知り合ったことがきっかけで、2021年1月に「水素の利活用及びまちづくりに関する連携協定」を締結した。
住友商事エネルギートランスフォーメーショングループの市川善彦ユニット長は、「水素が社会に広がっていくには、コストを含めハードルがある。ただ、住民が進んで水素を使うことで生活の豊かさやプライドを感じることができる。そうした事業を浪江町と一緒になって実践し、ノウハウを全国に横展開したい」と話す。
連携協定をもとに、浪江町で水素事業に取り組むのが住友商事水素事業第一ユニットの澤村なつみさんだ。2021年に浪江町に移住し、地元の小学校で水素教室を開いたり、町のイベントで水素エネルギーの仕組みをPRしたりしている。
「町民へのヒアリングでは、多少ものの値段が高くなっても浪江町から水素の利用が広がっていくなら構わないという声、防災の観点から地産地消のエネルギー源は持つべきだとの声も聞かれるようになった」と澤村さんは言う。
JR浪江駅前ではアウトドア事業会社のスノーピークと連携して、木造コンテナを使ったカフェやコワーキングスペース事業にも取り組んでいる。カフェではFCVから電力が供給され、コーヒーメーカーや電気釜が稼働する。
町民の生活にどう水素がつながる?
澤村さんは地元での宴席などはもちろん、ご当地ヒーローの一人、「水素ウーマン」に変身してイベントに参加するなど、プライベートでも地元の住民と接しながら、自然体で水素の普及に努める。
「町民には前向きな声と同時に、実証施設に自由に立ち入ることもできず自分たちが水素事業に関わりたくても関われないという話も聞く。町内で何が行われ、自分たちの生活にどうつながっていくのかを見せる努力を続けることが必要だ」と澤村さんは指摘する。
浪江町では駅前の大規模再開発が控えており、2026年度から集合住宅、交流施設や商業施設が順次竣工する。そこでは水素が重要なエネルギー源となる。住友商事は商業施設の一角で水素関連の体験ができるコーナーの設置も構想している。
「水素を使うことがクールだというライフスタイルを駅前の再開発事業の中でも見せていきたい」と前出の市川氏は意気込む。
水素をはじめ、新しい技術の導入に挑戦する町の雰囲気に感化され、町外からの移住者も1人また1人と増えている。いまでは移住してきた約700人が町の新しい住民となった。
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