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「乳房」を手放した女性が直面、それぞれの事情 傷跡をカバーできる「ヨガウェア」を開発・販売

東洋経済オンライン / 2024年4月6日 11時40分

日本からのオーダーを捌きつつ、駐在員の多いジャカルタでバザーに参加したところ、オリジナルのウェアが彼らの妻たちの目に留まり、次第に売り上げも増していったという。

人からいただく注文はありがたくかけがえないぶん、神経を研ぎ澄まして慎重に向き合わなくてはならない。また、オリジナル商品には十分に愛を注いで磨き上げなくてはならない。恵まれた状況なのだから、どちらにも手を抜かず成り立たせなくては……。

ふたつの仕事を大切に思うがゆえ、自分を顧みる暇はなくなった。疲労はピークに達し、日に日にストレスが募る。消耗し追い詰められていく彼女を、開業当時からそばにいた愛猫はじっと見ていた。

愛猫が教えてくれた予想外の乳がん

その日も、利香子さんは休むことなく働いていた。

すると突然、愛猫が彼女のパソコンに粗相をしたのだ。そんなことは、初めてだった。

「パソコンが使えないので、しかたなくスマホで仕事をすることにしました。

それで、ベッドに横になってスマホを触っていたら、ふと手のひらが胸のしこりに当たったんです。“え?”と思って脇も触ってみたら、脇にもコロンとしたものがあって……。そのとき初めて“乳がんかもしれない”と思ったんです」

それまで、胸に痛みや違和感はまったくなかった。すぐに病院に行くも、インドネシアでの処置は難しいと判断され、利香子さんは一時帰国を余儀なくされた。そして、病気の発覚と入れ替わるように、愛猫の姿が消えた。

「あの子は、うちのオフィスで生まれてずっと私が育ててきたんですけど……。大事なことを伝えて、ふっと姿を消してしまいました。必死に探し回りましたが、結局見つからなくて。でもあの粗相は、私へのメッセージだったと思うんです。無理矢理にでも私をパソコンから引き離して、“胸に触れてみて”と伝えてくれたんじゃないかと。そうでなければ、乳がんに気づくのがもっと遅れて、命にかかわっていたかもしれません」

愛猫の失踪に胸を痛めながら、利香子さんは闘病を始めた。

「私は最初ステージ3aと言われていたんですが、いざ手術してみたらがん細胞は脇のリンパ節を越えてリンパ腺まで広がっていて。それが一般的に言うステージ4なのか、ステージ3bなのか、はっきりとはお医者様に言われませんでした。

“ステージ”って人によって状況が違うので、同じ“4”でも大変な人もいれば、そうでもない人もいるんです。だから、ステージそのものはそんなに気にしなくていいんだと思いました」

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