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「乳房」を手放した女性が直面、それぞれの事情 傷跡をカバーできる「ヨガウェア」を開発・販売

東洋経済オンライン / 2024年4月6日 11時40分

利香子さんのように、わが胸を大切に思うがゆえ、再建を見送った人もいる。

一方、パートナーの思いに背中を押されて、再建を選んだ人もいる。

思い込みと忙しさで育ててしまった乳がん

藤代美波さん(仮名・48歳)は、夫婦でクリーニング店を営む1男1女の母親だ。

両親から引き継いだ家業を切り盛りし、その丁寧な仕事ぶりは町でも評判だった。

しかし、乳がんの浸潤が明らかとなり、彼女は治療のために店を離れた。

半年後――ひさびさに店頭に立った美波さんに、話を伺った。

「私は、思い込みと忙しさを言い訳にして、自分で乳がんを育ててしまったんです。小さなころから“おでき”ができやすい体質で、背中とかおしりとかあちこちにできものが顔を出していて。日帰り手術をしたこともあったので、“胸のもの”もきっとおできだと思っていました。当時、娘の進学問題で頭を悩ませていましたし、仕事の忙しさもあって、“これが終わったら診てもらおう”、“もう少し落ち着いてからにしよう”と診察を先送りにしてきました。でも、知人の妹さんが乳がんになったと聞いて急に不安になり、乳腺外科に行ったんです」

担当の医師は美波さんの胸を触診するなり顔色を変え、「すぐに細胞の検査をしましょう」と言った。あわただしく事態が動き、結果、美波さんは「今、みんながなっている乳がんのいちばんポピュラーなものです。ステージは2ですね」と告げられた。

夫に支えられ挑んだ同時再建

どうやって帰ったのかわからないほど動揺し、夫の誠さん(仮名・52歳)に話すと、彼は治療計画の打ち合わせに同行してくれた。美波さんは抗がん剤でがんを小さくしたのち、乳房を全摘出することになり、医師から再建の否応を訊かれた。

「見た目を気にするほどの年でもないか……と思ったし、何よりこわがりだったから最低限のことで済ませたかった」という彼女は、「そのままでいいです」と答えた。

しかし、長年連れ添ってきた夫は美波さんをやさしく諭した。

「夫に、“今まで家族のためを思って自分のことを後回しにしてきたでしょ? 大変な手術を終えたあと、鏡に映った胸を見て、気持ちの上でもハンデを負うのは違うと思う。病気ではないのに、美容のためにメスを入れて豊胸する人もいるよね。きみはそういうタイプではないけれど、同時再建が可能なら、この機会を逆手にとってやってみたら?”と言われて、再建することに決めました」

パートナーをもつ人にとって、わが身は“自分のもの”であると同時に、“相手のためのもの”としての側面ももつ。容姿に変化を伴う手術に挑む妻に、夫は“これを美容のチャンスととらえてみては?”と提案し、術後も続く彼女の未来を慮った。そんな夫の気持ちを汲んで、美波さんは乳房を“作り直す”ことに決めた。夫のためにも、できれば元のような胸になりたい。

“先っぽ、どうします?”

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