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「乳房」を手放した女性が直面、それぞれの事情 傷跡をカバーできる「ヨガウェア」を開発・販売

東洋経済オンライン / 2024年4月6日 11時40分

美波さんのがんばりと周囲のいたわりで、切除した彼女の乳房は、再びまろやかにふくらんだ。大変な思いをしたけれど、やはり再建に挑んでよかったと彼女は言う。

「前の胸も好きでしたけど、共に戦った戦友みたいな今の胸はもっと好きなんです。“がんばった! えらーい!”と思って(笑)。先生に“摘出した胸の写真、見ますか?”って訊かれたんですけど……見ませんでした。手術室のこわさも、お腹を切った痛みも思い出したくなかったし、元の胸とはきちんとお別れできたと思うんです。

乳首を整形する再再建や、人工乳頭の着用も考えていません。ただ、胸の先がへこんでいるので、そのままだと服の上から身体の線が出てしまうんです。なので、パット付きの下着は使っています」

乳がん経験者に見つけてもらえるように

美波さんは、自分なりの考えがあって乳頭を着けなかったと言っていた。

それはどういう思いによるものだったのか、改めて訊いてみた。

すると彼女はまわりを見回し、私を手招いた。

「よかったら私の胸、見てやってください」

驚く私の前で、彼女は上着を持ち上げた。

まるく、豊かな胸があらわになる。左の胸の先は、すべすべと平らかでほの白い。

それは陽を受け、真珠のようにつややかに光っていた。

「きれい……」

私は思わず声を漏らした。なぜか、目に涙がにじんだ。

美波さんは微笑んで続けた。

「前にどこかで聞いたんですけど、乳がんを経験した方が術後に温泉で同じような方に会って、“あっ! あなたも!?”って盛り上がったんですって。

だから私もあえてわかるようにして、同じような方に会えたら“あなたも!? 乳がん、がんばったよね!”ってなごみ合えたらいいなって思ってるんです」

美波さんが「ふふっ」と笑うと、ふたつの乳房が柔らかく弾んで、やさしく揺れた。

みきーる:文筆家、女子マインド学研究家

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