中国「勝ち組エンジニア」が語る日本移住の決め手 マイバッハに乗り温泉満喫しつつAIで起業も
東洋経済オンライン / 2024年4月6日 12時0分
日本への移住を宣言して、中国全土を大いにざわつかせたITエンジニアがいる。彼はどうして日本を選んだのか。そして日本に長く居続けるつもりなのだろうか。
【写真】FIREを実現し、日本に移住した郭宇氏がプログラミングを学び始めたころ
コロナ禍が始まってほどない2020年2月、当時28歳の郭宇氏は微博(Xに似た中国のSNS)で、中国最大のユニコーン企業(当時)でTikTokなどを運営するバイトダンスから早期退職することを宣言した。そのうえで日本に移住すると表明し、ほぼ無名だった彼は一躍時の人となった。
多くの同業者が「996(朝9時から夜9時まで、週に6日間の勤務)」で働かされている中で、「90後(1990年代生まれの世代)」の彼が早々にFIRE(経済的自立と早期リタイア)を実現したためだ。普通の家庭出身で、まったく自力でキャリアを築いたところも共感を呼んだ。
著名雑誌『人物』をはじめとする多くの中国メディアが彼のインタビュー記事を掲載。「知乎(Yahoo!知恵袋のような質問と回答が閲覧できるプラットフォーム)」に寄せられた彼に関する投稿は論争を呼び、閲覧数は1000万を超えた。
大学入学後にプログラミングに挑戦
郭氏は、中国南東部の江西省出身。子供の頃に今やテック都市として知られる広東省深圳市に移り住んだ。大学受験が終わるや否やプログラミングに挑戦した。父親が10年以上病に伏せ、その後植物状態となったこともあり、早くから経済的な自立を目指していたことがその理由だと明かす。
「家庭の経済的な苦境を目の当たりにするのが辛くて。それで自力で自分の住む場所を確保したかったんです。素朴な考えですね。大金を稼ごうと思ったわけではありません」
その後、郭氏は広州市の名門・曁南(きなん)大学に進学し、行政学を専攻した。しかし行政学への本人の関心は薄く、むしろプログラミングにより一層のめり込んでいった。
在学中にアリババ傘下のアリペイでインターンを開始し、同社のキャッシュレス決済の初期開発にエンジニアとして関わった。2013年にはアリペイを離れ、友人が北京・中関村地区で始めたスタートアップに加入した。
当時、有名大学や大手テック企業の集まる同地区にはインキュベーター(ベンチャー企業を支援する組織)があちこちで立ち上がり、スタートアップの黄金時代といえるほどの活気があった。そして、程なくしてその会社がバイトダンス社に買収されたのだった。
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