なぜ「厚底シューズ」を見ると気分が悪くなるのか 日本企業が競争で勝てなかった根本原因は何か
東洋経済オンライン / 2024年4月6日 8時30分
「いやそんなことはない。試着するじゃないか」と反論する人もいるだろう。しかし、第1に、試着して買う人は少数派だ。ひどい人は(そういう人が過半数なのだが)自分の最適なサイズを知らない。だから適当に買う。
例えばアマゾンのセールで買う。あるいはナイキの直販サイトで買う。両者とも返品可を売りにしているが、これまた返品する人は圧倒的に少数派だ。
第2に、試着しても、自分に適しているシューズなのか、まったくわからない。わかろうともしない。第3に、わかったふりをして、口コミを書いたり、さらに自分のブログなどでレポートを書いている人もいたりする。
しかし彼らは、自分の選択、買ったものが失敗と認めたくないから、ほとんどの人が絶賛する。あるいは、問題点を書きながら、結論は満足だという。これは日本でとくにひどい。批判精神がないのは文化的なものかどうかは興味深いが、今回のコラムでは脇に置いておく。
これらは、典型的な行動経済学的「非合理性」だ。
第1は、選択肢があるのにきちんと選択肢について考えない、というバイアスだ。ハーバード・サイモン流の限定合理性とも言えるが、要は消費者はぐうたらなのである。
第2は、選択肢について、その内容を理解しようとしない。できない。これも合理性の限界だ。
また、わかろうともしないというのは、ある意味、合理的であるかもしれない。なぜなら、自分の効用関数がわかっていないから、どの選択肢が自分に最適か調べても意味がないから、選択肢の内容は調べず、明らかにわかるもの、ブランド、評判、見た目だけで判断する。見た目は裏切らないからである。
第3は、自分の選択の誤りを認めたくない。後悔を回避するために、自分の選好を選択した商品に合わせて変えてしまう。結婚ではそれが必要かもしれないが(実は、これは私の学部の卒業論文のテーマである)、効用関数を事後的に変えてしまうという非合理性の極みだ。認知的不協和といってもよい。
選択における根底の原理が根本から崩れているワケ
つまり、意思決定科学としての経済学において”Choice(選択)”は最重要の問題であるが、そのいちばん根底の原理が、現実においては根本から崩れているのだ。
具体例を見よう。第1に、厚底シューズを初めて買う場合、どのくらいフィットすればいいのかよくわからない。普段履いている靴も実はフィットしていないものを履いている人が大半だから、まったく新しいタイプのシューズでのフィットはどのくらい、どうなっていればいいのか、わからない。
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