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なぜ「厚底シューズ」を見ると気分が悪くなるのか 日本企業が競争で勝てなかった根本原因は何か

東洋経済オンライン / 2024年4月6日 8時30分

第2に、初めてでなくとも、あるいはフィット感がわかってきても、最適なものを皆選ばない。私の友人は、ナイキの厚底にしてケガが増えて悩んでいて、私に勧められてアシックスに乗り換えた。

アシックスで入念に測定してもらい、試走もして、プロのアドバイザーから、体格からも走法からも「メタスピードエッジ」(歩幅が小さく回転数が高い、ピッチ走法型のランナー向け)を勧められた。だが、結局彼女はメタスピードスカイ(歩幅が広い、ストライド型のランナー向け)を買った。

なぜだ? これは彼女に限ったことではない。人々が厚底シューズを買うときの理由。理由その1。オリンピックでも箱根駅伝でもランナーが履いている。かっこいい。速そうだ。

理由その2。見た目にクッションが分厚くてふわふわだ。足に良さそう。飛び跳ねて、速そう。気持ちよさそう。

理由その3。履いてみて、あーなんてやわらかいクッション。今までにない履き心地。跳ねる跳ねる。気持ちいい。歩いてみて、足が前へ前へ出る! これに決まり!

ブラントや知名度が第1。第2に、商品の見た目。視覚に訴える。第3に、触り心地だ。

だんだん、商品の経験を積んでいって、第3までくれば、商品のことを理解して買っているように見えるが、実はまったく違う。そして、これが最も危険だ。

なぜなら、足を入れたときの瞬間に気持ち良いシューズと、数カ月毎日ランニングするのに身体が喜ぶシューズとはまったく別物だからだ。したがって、試着というのは、商品の実際の自分にとっての価値を試すこととはまったく違い、非合理的な快楽に基づく商品選択をさらにあおるものにすぎないのだ。

これは、多くの消費行動に当てはまる。買うときの意思決定と使うとき体験する効用とのタイミングがずれている消費財はすべて、このわなに陥る。結婚はその典型だし、職業選択も同じだ。

そして何より、投資において当てはまる。株を買うときと、その後、保有したとき、売るとき、まったく別の自分がそこにいることを、投資経験が豊富な人ほど実感しているだろう。それに気づいていない人は幸せだが、騙されている。この場合、昔の自分に今の自分がだまされているということだが、あるいは、今の自分は将来の自分をだますことに気づいていない、といってもいいかもしれない。

本能に基づく消費行動でも矛盾に気づくのは難しい

本能に基づく消費行動は、大丈夫だと思うかもしれない。だが、ランチの選択でも同じことが起こる。

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