2060年の財政を「持続可能」にする増税以外のカギ 内閣府の長期試算が示す条件付きの未来予想図
東洋経済オンライン / 2024年4月8日 8時0分
このシナリオでは、長期安定シナリオと比べて、技術進歩による成長率の押し上げに加えて、出生数のさらなる増加により2040年代以降0.04~0.1%さらに成長率を押し上げ、2030年代以降実質成長率は1.5~1.7%で推移するという。
これらのシナリオの実現可能性については後述するが、ひとまず現状投影シナリオと長期安定シナリオに絞って、今後の日本の財政がどうなるかをみよう。
財政のカギを握るのは「医療・介護」
財政収支の行方は、財政支出と税収の推移にかかっている。財政支出の中でも社会保障費が最大の費目である。特に、今後その増加が大きいと見込まれるのが医療と介護である。
内閣府の長期試算では、医療と介護について、特別に細かく推計している。まず、各費目の動向について、人口構成の変化、単価の伸び、医療の高度化等といったその他要因に分けて推計している。
人口構成の変化は、前掲の「将来推計人口」等を踏まえたもので、高齢化率は今後さらに上昇するから、その分だけ医療・介護費は増える。
単価の伸びは、賃金上昇率(就業者1人当たり名目GDP成長率に相当)等を勘案して増えると見込んでいる。
そして、その他要因の部分の医療費については、これまでの実績を考慮して年率1%で医療費が増加するケースと、医療の高度化が加速すると見込んで年率2%で医療費が増加するケースの2つのケースを推計している。
経済成長と医療・介護費の関係をここで整理しておこう。
経済成長率が高いときには、それだけ賃金も上昇するから、医療・介護従事者の賃金を増やす分だけ医療・介護費が増えることになる。医療・介護費が増えれば、その財源となる税金や保険料の負担も増える。
ただ、経済成長率が高いと医療・介護従事者以外の所得も大きく増えているから、所得に比した負担率は緩やかにしか高まらない。最近でも、通常国会で岸田文雄首相が「実質的な負担増とはならない」と答弁しているのも、この点を暗に意図している(もう少しわかりやすく説明すべきだとは思うが)。
負担額は増えても、それ以上に所得が増えれば、所得に比した負担率は上がらないという構図である。
他方、経済成長率が低いときには、その逆で、賃金があまり増えないから、医療・介護費はさほど増えず、その分、税金や保険料の負担額はあまり増えないものの、所得が伸び悩むために、所得に比した負担率は高まることになる。
成長がなければ医療費が増え、負担率が上がる
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