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2060年の財政を「持続可能」にする増税以外のカギ 内閣府の長期試算が示す条件付きの未来予想図

東洋経済オンライン / 2024年4月8日 8時0分

国民負担率を上げないようにするには、医療・介護費で、いかに工夫してその費用の増加を吸収するかがカギとなる。

内閣府の長期試算では、医療介護分野でのDXの活用などによる給付の適正化・効率化、地域の実情に応じた医療・介護提供体制の構築、高齢世代の自己負担割合の引き上げなどによる負担構造の見直しによって、医療高度化などその他要因で年率1~2%増えるかもしれない医療・介護費の増加を吸収することを期待している。

それが実現できれば、長期安定シナリオでは、医療・介護費の対GDP比を、2019年度から2060年度にわたって、8%台にキープできる姿を示している。つまり、国民負担率が、医療と介護の要因によって上がるということにならないようにできるわけである。

では、わが国の政府債務残高(公債等残高)対GDP比はどうなるか。残された推計上の仮定としては、社会保障以外の経費と歳入、そして経済成長率と長期金利の関係についてである。

内閣府の長期試算では、社会保障以外の経費と歳入は、名目成長率と同率で増加すると仮定している。つまり、社会保障以外の経費の対GDP比と歳入対GDP比は2034年度以降不変としており、この両者の要因によって財政収支が悪化することはないという仮定となっている。

逆にいうと、財政収支が悪化するか否かは、社会保障費、特に前述した医療・介護費の伸び次第、という想定である。

大幅な消費増税は想定せず

また、別の言い方をすると、社会保障以外の経費は、対GDP比が一定に維持できる程度には抑制されるが、それ以上に削減されることは想定していない。例えば、児童数が減るのに伴い教育費の対GDP比が下がっても、その分、他の社会保障以外の経費が増やせるという想定ともいえる。

さらに、歳入対GDP比も一定に維持するという仮定だから、増税するとしてもその範囲内でしか増税をしないことを仮定している。

消費税率について、内閣府の長期試算ではいっさい言及がないが、仮定から逆算すれば、人口減少によって消費税収が減るものの、所得が前述のような経済成長率で増えて、それに伴い1人当たり消費が増えることで消費税収対GDP比が大きく下がらなければ、大幅な消費増税は想定していないといえる。

名目成長率と長期金利の関係は、内閣府が別途出している「中長期の経済財政に関する試算」で、2033年度に長期金利が名目成長率よりも0.6%ポイント高い結果となっていることを援用している。

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