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2060年の財政を「持続可能」にする増税以外のカギ 内閣府の長期試算が示す条件付きの未来予想図

東洋経済オンライン / 2024年4月8日 8時0分

この構図が、現状投影シナリオと長期安定シナリオで起こる。つまり、より実質成長率が低い現状投影シナリオでは負担率がより高まる一方、長期安定シナリオでは負担率は緩やかにしか上がらない。

医療・介護費の対GDP比は、2019年度に8.2%だったが、現状投影シナリオでは2060年度には、その他要因による医療費の年率増加率が1%のときには13.3%にまで上昇、2%のときには16.1%にまで上昇する。

このままではわかりにくいので、筆者の独自の計算で、国民負担率に換算してみよう。国民負担率が50%に近づいて「5公5民」などと話題になった指標である。

国民負担率の分母は国民所得であるから、前述の比率の分母であるGDPとは異なる。近年の日本では、国民所得はGDPのおおむね72%に相当する。したがって、単純化すれば、対GDP比の比率が1%ポイント上がると、対国民所得比の比率は1.389%ポイント(=1÷0.72)上がることを意味する。

2019年度の日本の国民負担率は44.2%だった。そこで、現状投影ケースのその他要因で医療費が年率1%増加するケースでは、2019年度から2060年度にかけて医療・介護費は対GDP比で5.1%ポイント増加するから、その財源負担が国民に及ぶと、対国民所得比では約7.1%ポイント上昇する。

つまり、2060年度には、他の要因では負担率がいっさい上昇しないと仮定しても、国民負担率は51.3%と50%を超えることが予想される。

同様に計算すれば、現状投影シナリオの医療費がその他要因で年率2%増加するケースでは、2019年度から2060年度にかけて医療・介護費は対GDP比で7.9%ポイント増加するから、対国民所得比では約11.0%ポイント上昇して、国民負担率は55.2%に達すると予想される。

これは、実質成長率が低い現状投影シナリオである。他方、それより実質成長率が高い長期安定シナリオではどうか。

同様に医療費増加について2つのケースを想定しており、2060年度の医療・介護費の対GDP比は、医療費がその他要因で年率1%増加するケースでは10.5%(2019年度比2.3%ポイント上昇)、年率2%増加のケースでは12.7%(2019年度比4.5%ポイント上昇)と推計している。現状投影シナリオよりも低くなっている。

先と同様に、長期安定シナリオでも国民負担率換算にすると、2060年度には、年率1%増加のケースでは47.4%、年率2%増加のケースでは50.5%となる。そうしたインパクトである。

効率化と負担見直しで医療介護費8%台をキープ

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