サラリーマンよ、昭和の一社懸命はもうやめよう 「物価と賃金の好循環」へのいちばんの近道とは
東洋経済オンライン / 2024年4月13日 8時30分
困ったことにこの国の実質賃金は、今年2月まで実に23カ月連続で「前年同月比マイナス」を続けている。つまりほぼ丸2年間というもの、インフレ率が賃金上昇率を上回っているのだ。これでは個人消費が伸びないのも無理はない。生活水準が下がり続けていることに加えて、「脳内価格」との齟齬によるストレスも加わっていることになる。
海外の見方は真逆「戦略価値上がりまくりのニッポン」
そこで問題は、今年の春闘を反映して、いつ頃になったら実質賃金がプラスに転じるのか。日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト調査」によれば、今年の「7月から9月には」という声が多いようである。今年の6月上旬には、例の「1人4万円」の定額減税も実施される。だから夏頃になれば、少しは個人消費が上向くかもしれない。
それにしても歯がゆく感じるのは、日本経済を見る目が内外で大きく食い違っていることだ。海外投資家は、「あの日本経済に、とうとうチャンスが訪れた!」と楽観視していて、現下のインフレも「日本経済が眠りから覚める契機」という認識である。「中国株は怖くてもう買えない」という事情も重なり、外国人買いが日本株を押し上げている。
「外人はいつ逃げ出すかわからない」と警戒する向きもあるようだが、筆者の見るところ状況はむしろ逆だ。日本株を買い遅れた機関投資家は、むしろ「持たざるリスク」を恐れている。もしくは「急いで日本株のアロケーション(配分)を増やせ!」という上司からの圧力に直面している。だから買い圧力は、まだまだ強いと考えるほうがいい。
普通だったら、経済にはマイナスとなる「経済安全保障」の問題も、日本においてはむしろ追い風となっている。「ここなら安全」と言わんばかりに、日本国内に台湾のTSMCの半導体工場が建設され、マイクロソフトによる生成AIの研究拠点の設置も新たに決まった。
現地時間10日に行われた日米首脳会談でも、アメリカ側が思い切り日本を持ち上げていることに、意外な思いをした人は少なくなかっただろう。
今回の岸田文雄首相訪米では、斎藤健経済産業大臣も同行して、ジーナ・レモンド商務長官との間で日米商務・産業パートナーシップの会合が開かれている。
半導体やAIなど先端分野の協力が目玉であるが、もうひとつの重要案件は、ジョン・ケリー氏の後を継いで気候変動担当大統領特使に就任する予定のジョン・ポデスタ上級補佐官との間で、日米のクリーンエネルギーをめぐる協議を深めることだ。すなわちアメリカ側のIRA(インフレ抑制法)と日本のGX(グリーントランスフォーメーション)を一体化するのが狙いだ。
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