YouTuberの論理がZ世代に与える絶大な悪影響 苦言を呈する「アンチ」に「アンチ」する世界観
東洋経済オンライン / 2024年4月17日 11時40分
なぜ、そうなったのだろう。言ってしまえば、インフルエンサーはビジネスでやってて金目当て、だからだ。「客の方だけ向いておけばいい、金を落とさない相手は無視してよい」というビジネスの論理を純化させたインフルエンサーにとって、自分の味方になるかどうかで、とるべき態度がすべて決まっているのだ。
インフルエンサーはファンありきのビジネスをしている。フォロワー数や再生数を稼いで広告収入を得て、直接的にグッズなど商品を買ってくれることもある。だから、とりあえず多くの人に知ってもらって、有名にならないといけない。でも、有名になるとアンチがつきやすい。すべての行動は見張られてて、少しでも隙を見せたらアンチが殴り掛かってくる。だから、そのアンチにアンチしないといけなくなる。
アンチ─アンチすると、仲間内での結束が高まる。共通の敵を見つけて、さらに自分たちの正しさを確信する。経営組織論では、これを集団の凝集性とよぶ。アンチに負けちゃいけない、もっと応援しないと。よし、応援消費だ。投げ銭しよう。アンチ─アンチは、うまく使えば凝集性を高める材料となり、ビジネスのためにも非常に有効なのだ。
なんというか、好きで応援して、自分でお金を払ってるなら、好きなようにしたらいいとも言える。「インフルエンサー」と「客」として結束している人々に対して、外から何かモノ申すのは、きわめて困難なことだ。しかし、インフルエンサーにのめりこむZ世代にどうしても言っておくべきことがある。
こんな論理は決して「リアル」では通用しない、ということだ。
現実世界の「アンチ─アンチ」
たとえば、職場で「あなた」を叱ってくる上司がいるとする。叱る理由も色々あるだろう。私怨とか、機嫌が悪いとか、理不尽な理由もあるかもしれない。インフルエンサー的世界観に則るなら、この上司はアンチである。アンチ─アンチして、断固として拒絶せねばならない。
でも、世の中そんな人ばっかりじゃない。別に、上司はあなたのアンチではない。ツイッターで他人を攻撃するような人は、社会のごくごく一部、よりもっと少ない超特殊事例だ。あなたに苦言を呈してくる人は、ふつうはアンチではない。
にもかかわらず、YouTuberに倫理観を教わったZ世代は、自分を傷つける人はぜんぶアンチだと思っている。で、それにはちゃんとアンチ─アンチしないといけない。だって、大事な大事な推しは、そうしているんだもん。
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