日本の選択「年収の壁の廃止」か「移民に参政権」か 「扶養控除」をなくし「子ども支援」を徹底すべき
東洋経済オンライン / 2024年4月19日 10時0分
さて、生産性と賃金を上げる手立てを探るためには、「なぜ日本の女性の生産性と賃金は低いのか」、その原因を探る必要があります。
結論から言うと、扶養控除などいくつかの財政政策に原因があると言えます。
この件に関しては、東京大学大学院経済学研究科の北尾早霧教授らの「女性と労働参加と生産性:税・社会保障制度の役割」という、素晴らしい論文があります。英語のタイトルは「Why Women Work the Way They Do in Japan: Roles of Fiscal Policies」です。
以下、そのサマリーから一部を引用します。
本論文においては、女性の労働参加と賃金構造を説明する世代重複型モデルを構築する。その上で、財政政策に焦点を当て、配偶者控除、第三号被保険者の社会保険料免除および遺族年金が女性の行動にどのような影響を及ぼしているか分析する。
その結果、いずれの制度も女性の就労意欲を抑制し、賃金水準を低下させることがわかった。3つの政策が全て廃止されていた場合、平均労働参加率は13パーセントポイント、平均賃金は約28%高い水準になるというシミュレーション結果が得られた。
労働参加率が上昇するだけでなく、より多くの女性が非正規ではなく正規雇用を選び、ライフサイクルを通じた人的資本の蓄積によって所得が増加する。税負担は増すが、所得増の効果が上回ることで平均消費水準は上昇し、政府歳入の増加分を還元することにより、厚生も改善することが示された。
持続的な所得水準の上昇には、生産性の上昇が不可欠だ。無所得あるいは低所得の配偶者の生活費を支えるために講じられてきた政策は、低所得者を保護するという本来の役割を果たしておらず、女性の労働参加や生産性と賃金上昇の大きな足枷となっている。(太字は筆者による)
この論文では、いわゆる「年収の壁」が取り上げられており、これらの存在が女性自ら非正規雇用を選択し、労働供給を制約する原因とされています。
年収の壁は、以下のようにいくつも存在します。
(1) 100万円の壁
(2) 103万円の壁
(3) 106万円の壁
(4) 130万円の壁
(5) 150万円の壁
100万円前後で住民税が課税され始め、さらに103万円以上になると今度は所得税が課税され始めます。106万円以上になると、社会保険の加入が必要となる勤務先もあります。130万円となると、社会保険の加入が必要になります(他の条件もあり)。150万円は満額の配偶者特別控除を受けられる年収の上限です。
年収の壁は「人口増加時代」の遺物
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