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王子HD、「薬用植物の王様」に注力する切実な事情 甘草の大規模栽培で「脱・製紙企業」目指す

東洋経済オンライン / 2024年5月4日 9時0分

北海道の農場で収穫した甘草の根(写真:王子ホールディングス)

製紙業最大手の王子ホールディングス(HD)が、国内で栽培が困難とされる薬用植物「甘草(カンゾウ)」の大規模栽培を進めている。今後、漢方薬の原料である生薬や食品の添加物、化粧品の原料などでの活用を目指している。

【図表】甘草の年間使用料は2000トンを超えた(医薬品用途)

北海道で立ち上げた研究所を拠点に、甘草栽培に着手してから約10年。苦難を乗り越えて大量栽培技術を確立してきた。なぜ同社は甘草の栽培に力を入れるのかを探った。

「もはや製紙企業ではない」

王子HDは2012年10月に王子製紙などを傘下に持つ、持ち株会社として発足。その2年後の2014年に経営理念を刷新し、「もはや製紙企業ではない」という強烈なメッセージを社内外に打ち出した。

当時、王子HDが発行した「王子グループレポート2014」では、「主力事業の一つである製紙業の外部環境は近年急激に変化し、単純な製紙業だけを見れば、市場環境はもはや縮小へ向かっていくというのが実情。『もはや製紙企業ではない』という言葉は、製紙業につらなる古い文化・意識を払拭する意味を込めたもの」という趣旨が記載されている。

経営理念でうたわれた「革新的価値の創造」を推進する部署として、2014年4月にこれまでの研究開発本部をイノベーション推進本部に組織変更し、重点的に取り組む領域が打ち出された。

その中で、製紙企業として、紙の原料となる植林研究で培ってきたノウハウなどが活かせる分野として、漢方薬の原料となる薬用植物の栽培に取り組むことになった。

薬用植物の研究については2013年に北海道の下川町に設立された医療植物研究室(現在の王子薬用植物研究所)が中心となり行われたが、薬用植物の中でも同研究所が白羽の矢を立てたのが、甘草の栽培だ。

甘草は医療用漢方製剤の原料となる生薬の中でも、最も多く使われている。日本漢方生薬製剤協会(日漢協)の調査によると、2020年度の国内の生薬の総使用量(305品目)は約2.8万トンだが、そのうち約7%に当たる約2019トンが甘草となっている。

漢方薬メーカー最大手のツムラが販売する129品目の医療用漢方製剤のうち、約7割に当たる94品目で甘草が使用されているという。代表的な製品は、風邪のひき始めなどに処方される葛根湯だ。

甘草の効能としては、抗炎症作用や抗アレルギー作用、解毒作用、鎮痛作用、去痰作用などが知られている。

ほぼ100%を中国からの輸入に依存

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