藤井聡太に挑戦「豊島九段」が人との練習やめた訳 "孤高の努力家"が「棋聖」獲得までに行ったこと
東洋経済オンライン / 2024年5月8日 12時40分
現在、藤井聡太名人に挑戦している豊島将之九段。2019年に令和初の名人となった実力者です。先に行われた第1局、第2局では残念ながら黒星となりましたが、当代最強の名人を窮地に追い詰めたと話題になりました。5月8日、9日に行われる第3局での熱戦も期待されています。
「AIより強い」と称される藤井名人。AI研究をして強さを磨いていった次世代の棋士として知られていますが、豊島九段もAIで将棋を追究してきた棋士の一人です。“人”との練習を断ち、AI研究に勤しんだといいます。その孤独な戦いの日々と知られざるエピソードを、『絆―棋士たち 師弟の物語―』より一部抜粋・編集のうえ、お届けします。
「人」との練習を一切やめた
関西将棋会館の棋士室には、いつも若手棋士や奨励会員が集まってくる。山崎隆之、糸谷哲郎、稲葉陽など関西を牽引する若手が盤を挟んで互いを磨き合う。ある時期、ふと誰かが言った。
「豊島さん、本当に見なくなったね」
稲葉陽(現八段)は、豊島と何年もVS(一対一の練習)や研究会を行ってきた。2015年に自身が第4回電王戦出場を決めた際に、対策としてしばらくソフトを使った研究に集中しようと思った。
そのことを豊島に伝えると「そうなんだ。自分もちょうど研究会をやめようと思っていたんだ」と言われる。稲葉としては電王戦が終わるまでのつもりだった。そのときは豊島が何年にもわたって、研究会やVSを休止することになるとは思わなかった。
それまで豊島は月に十数回の研究会を行ってきた。関西の棋士の中でも1、2位の多さである。それを2015年秋頃に、すべてやめた。
転機になったのは、前年の第3回電王戦出場である。そのとき豊島は23歳、B級1組七段。棋界の未来を担う若手筆頭の棋士が、自らコンピュータとの対戦を志願した。そしてソフト「YSS」と対戦して勝利。出場棋士5人の中で、コンピュータに勝ったのは豊島だけだった。
電王戦当時、筆者は豊島に取材している。取材で会った彼は、ピュアな空気感を漂わせる青年であった。まだ高校生くらいに見える儚さがあった。豊島は当時このように話している。
「立候補したのは、自分自身のためです。普通にやっていてもタイトルを獲って、棋戦優勝できるとは思っていません。(ソフトとの対戦は)リスクはありますが、負けるのを恐れていても仕方がないと思います。コンピュータ対策をすると、これまで自分が否定してきた手も指さなければならなくなる。いままで人間同士の将棋でやってきたことをちょっと変えなければならないので」
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