「敵国攻撃能力」を備えて日本は何を狙うのか 中国・海南島の中国海軍基地が第1目標だ
東洋経済オンライン / 2024年5月11日 8時0分
付け加えれば、攻撃範囲も揺れ動いている。これは名称の変化からうかがえる。最初の「敵基地攻撃能力」とは軍事基地や所在する軍隊を攻撃するニュアンスである。それが後には「反撃能力」に名前を変えた。
これは目標は軍隊には限らないニュアンスを含んでいる。目標を軍隊に絞るのか、交通施設等を含むのかも決めかねていたのだろう。
日本は敵国攻撃能力をどう使うのか。それは現時点ではまったく決まっていない。ただし、今後の方向性は推測できる。すなわち「おそらく防衛省・自衛隊はその方針でまとまるだろう」との内容は見えている。
それは中国の戦力分散である。平時、戦時を問わず中国に後方防衛を強要する。それにより対日正面に向く軍事力を減らす。その形でまとまるだろう。
そのために日本は中国の後方部に巡航ミサイルを指向する。まずは南シナ海沿岸部である。可能ならば海から離れた内陸部も狙うこととなる。
中国の戦力分散を狙うか
これは「日本が戦時に南シナ海や内陸部に巡航ミサイルを打ち込めばどうなるか」を考えるとわかりやすい。
中国は後方防衛を強化しなければならなくなる。日本の巡航ミサイル迎撃のために戦闘機や対空ミサイルを用意する。また、発射元となる日本潜水艦や護衛艦への警戒も強化しなければならない。
その分の戦力は日本の正面から減る。後方防衛に戦力を割いた分、各正面の戦力は減る。東シナ海方面の戦力も減る。それにより日本は中国との軍事的対峙を有利にできる。東シナ海正面における中国軍事力と日本軍事力の比率を改善できるのである。
なぜ、そのように推測できるのか。戦力分散の強要は日米の対中軍事戦略と合致するからである。
アメリカは対中軍事戦略の主軸に据えている。南シナ海まで軍事力を展開しているのはそのためである。
アメリカが潜水艦を投入すれば中国は対潜水艦部隊を配置しなければならない。哨戒機を送り込めば、中国は多数の戦闘機を配備しスクランブル(緊急発進)をかけなければならない。
これには「航行の自由作戦」も含まれる。アメリカが軍艦1隻を南沙諸島に送り込むと中国は数隻の軍艦で対応しなければならない。
さらに、それ以降の「航行の自由作戦」に備えて南シナ海に多数の軍艦を張り付けなければならないのである。
戦時に内陸攻撃を仕掛けるのも同じ趣旨である。おそらくアメリカは昆明や蘭州、さらには新疆、チベットを攻撃する。
それも防空網が手薄なミャンマーやカンボジア、ラオス、場合によればパキスタン上空を経由した攻撃を実施するだろう。中国に後方全体の防空を強要するのである。
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