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地味な路線だった「JR奈良線」、利用者の急増なぜ 沿線自治体も費用負担して複線化など輸送改善

東洋経済オンライン / 2024年5月14日 6時30分

宇治川を跨ぐ橋を行く221系。単線橋梁だったが今回、複線化された区間である(筆者撮影)

東海道新幹線京都駅の中央乗換口を出て、すぐ隣のエスカレーターを降りると、JR西日本の奈良線ホームである。主力のクロスシート車221系とともに、関東では姿を消しつつある国鉄型205系も出発を待っている。

【写真を見る】JR東日本では貴重車種となった205系が活躍するJR奈良線とは?

JR奈良線は木津―京都間の通勤路線で、「みやこ路快速」が京都駅と奈良駅を44分で結ぶ。近年、利用が特に伸びた路線である。2019年度の輸送密度は2万9752人で、1987年度比で2.8倍となった。

沿線には東福寺、伏見稲荷、宇治、奈良と有名観光地が点在しており、観光シーズンになると、国内外の観光客で電車はすし詰めになる。

2023年3月に複線化第2期事業が竣工して1年。関西でも影の薄い存在だったJR奈良線は、どのように変貌しているのだろうか。

ローカル線扱いだったが設備改良で本数増へ

京都・宇治市内のJR奈良線東福寺―新田間の各駅の乗車客数は2019年度に1日あたり5万1595人で、1990年度1万4438人の3.5倍に増えた。城陽市にある3駅の乗車客数も同時期に1.6倍である。

急激な利用増の背景には、JR西日本と沿線自治体が、複線化や駅新設などの輸送改善を推進してきたことが大きい。

国鉄時代の奈良線は、単線非電化のまま近代化から取り残されてきた。気動車は朝に毎時2往復、昼は同1往復とローカル線並みの本数だった。1984年の電化でも利用の伸び幅はわずかだった。

分割民営化後、JR西日本は奈良線の設備改良に着手する。1991年に列車交換設備を2カ所増設し、快速の運行を始めた。翌年には六地蔵駅が完成し、京都―宇治間の運行本数は1984年比で3倍増となった。

続けて複線化第1期工事として京都―JR藤森間5.0km、宇治―新田間3.2kmの線増に着手。2001年に完成する。ダイヤ改正で京都―宇治間は186本と改正前の1.5倍に増発され、利用者は2割も増えた。2004年に京都市営地下鉄東西線と六地蔵駅で接続するようになり、利便性はさらに向上した。

その反面、苦戦を強いられたのが、すぐ近くを走る京阪だ。宇治線各駅の1日当たり乗車客数計は1990年度3万6233人から2019年度1万8962人と半減し、京阪本線の利用も低迷している。JR奈良線の増発や新駅設置、京阪の運賃値上げと減便、中書島駅での乗り換え、社会減や少子高齢化、京都市の都市構造の変化などの原因がある。近鉄京都線も宇治市南部・城陽市域でJR奈良線と競合し、近鉄小倉―富野荘駅間各駅の利用者数はピーク時の6~7割程度にとどまる。

稲荷駅に集まるインバウンド客

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