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「ドローン急襲」想定しない日本のヤバい防衛体制 「いずも」上空から撮影ができてしまう事情

東洋経済オンライン / 2024年5月15日 11時0分

しかし実態は違う。他国では開発、実用化されている対ドローン用ジャマーなどの多くは自衛隊の周波数帯では使えないので輸入して使用できない。また無人機にしても本来長距離での運用に必要な海外で使用されている5.8〜2.4GHzの範囲の周波数帯が使用できない。陸自が採用したボーイング社のスキャンイーグルも仕様を5GHzから2.4GHzに変更されている。このため性能は大幅に落ちている。わざわざ金をかけて、高い値段で低性能に改造して採用している。

慶応大学SFC研究所の部谷直亮上席研究員がWedge2023年3月号に寄稿した「『有事』に無力な日本の電波法ドローン活用に必要な覚悟」では以下のように述べている。

「米軍が運用する米国製ドローン『Skydio2+』の通信距離は最大6キロメートルとされるが、これを日本の電波法に適合した形で運用するとたった300メートル程度しか飛行できなくなってしまう」。また対ドローン機材を扱う企業の社長の言葉として「電波法の出力規制によって、対ドローン機材の有効射程距離は100メートル程度にまで低下する」

他国ではすでに港湾のパトロールや防御用に武装した無人艦艇を導入している国もあるが、海自にはそのような装備はない。仮に導入しても前記のような周波数帯の問題で能力は低くなるだろう。

周波数帯の変更は、一円も掛けずに飛躍的に防衛力を強化できる。電波の管理は総務省であり、これは政治を巻き込む利権の温床だ。だから手を付けにくいのは理解できるが、それをやらずにドローン導入やネットワーク化を勧めても機能しないガラクタを買って終わることになる。政策官庁である防衛省は本来全力でこれに取り組むべきだ。またこのような政治を巻き込み複数の省庁にまたがる懸案事項は本来NSS(国家安全保障局)が積極的に関与すべき案件であるが、そのような動きは見られない。

海上自衛隊では拠点だけでなく、護衛艦などの水上艦艇のドローン含めて近接防御に対する危機感が欠如している。先述のように「堂々たる艦隊決戦」以外は戦いでないと思っている節がある。護衛艦などの水上艦艇にも外洋に出れば電波法の規制なしに使えるのだが、対ドローン用のジャマーなどは搭載されていない。

ドローンに対処するRWSの導入も進まない

さらにRWS(リモート・ウェポン・ステーション)の導入も進んでいない。RWSとは元来装甲車用に開発された機材で機銃など小火器に暗視装置、ビデオカメラ、レーザー測距儀などを統合したもので、車内にいながら周囲を監視し、射撃できるシステムだ。また安定化装置や自動追尾装置が搭載されていれば走行中に移動する目標も射撃が可能となる。

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