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外国人観光客に高い料金「二重価格」設定は差別か 円安で過熱するインバウンド消費を逆手に取る?

東洋経済オンライン / 2024年5月16日 11時20分

寿司屋でいえば、外国人向けメニューでは並寿司は表示しないというやり方だ。しかし、「選択肢」を示さないというやり方は、そもそも常連だけのための「裏メニュー」の是非についても話題になるが、誠実とは言えない。

自由競争下では、価格は当事者間で自由に決められる。同じサービスや物で相手によって取引価格が違っても本来は問題とはならない。ただ、そこでは、契約当事者の立場が対等であり、自由意思によって契約条件が決定されるという前提がある。

しかし、事業者と消費者(BtoC)の取引においては、情報力、資金力、交渉力等において立場の非対等性が指摘されている。たとえば、契約自由の原則には「相手を選ぶ自由」を含むが、「外国人お断り」などの売り手の意思表示は差別として問題となりえる。

売り手の市場での影響力は格段に大きい場合もあり、社会的な影響が大きいからだ。大手の飲食店等が、同じ商品を外国人には高く売るような状況は同様に認識される可能性がある。

外国人向けスペシャルメニューを用意する手も

外国人向けの料理を作り、料金を高く設定するという方法はどうであろうか。いわゆるスペシャルメニューだ。外国人好みの料理や豪華な料理を高い価格で設定する形であれば批判は起きないだろう。

外国人向けに相撲ショーを見ながら食事ができる店舗も登場している。外国人向け料理を頼むと「忍者」が料理を運んでくるなどの工夫をしたら楽しそうだ。外国人が好むような品質やサービスを付加し、それに見合った料金を設定することは何ら問題ない。商売はWINーWINの関係でなければ納得されないし、持続性はない。

そもそも外国人がすべて円安の恩恵を受けた裕福な人たちだけではない。バックパッカーと言われる、安い費用で海外の文化に親しみ、人々との交流を楽しむ若者も多い。

彼らにはむしろ、安い料金で日本旅行を楽しんでもらいたいと思う。それが長い目で見たときに国益にもかなう。「おもてなし」に反するような安易な「外国人価格」は結局、市場で支持を得られず続かないだろう。

日本人の中にも嫌悪感情がうまれる

相手との駆け引きで契約条件を決めるようなことに慣れていないこともあり、相手の顔や懐具合を見て値段を決める商売を感情的に「えげつない」と感じる日本人の国民性もある。

そもそも「失われた30年」といわれるように日本の長期にわたる経済停滞は諸外国と比べて顕著で、異常なほどの円安は国力の低下を示すとの意見も多い。世界各国の物価比較においては、イギリスの経済誌『エコノミスト』が作成する「ビッグマック指数」がよく引き合いに出される。最新の結果(2024年1月公表)を見ると、次の通りだ。

(※外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

インバウンド消費が顕著であることも頷ける。韓国、中国、タイより日本のビッグマックは安いのだ。しかし、日本の物価を安いと感じる外国人には、より多くお金を落としてもらうだけでなく、構造的な問題を解決することも重要だ。

細川 幸一:日本女子大学元教授

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