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安すぎる大学の学費により日本社会が失ったもの 学生の経済的負担が小さいことは利点だが…

東洋経済オンライン / 2024年5月16日 11時40分

大学を希望すれば誰でも学べる「全国民の準義務教育機関」と位置づけるなら、学費は安価なままのほうが良いでしょう。日本の大学進学率は56.6%(文部科学省「令和4年度学校基本調査」)で、アメリカ・中国・韓国など主要国と比べて低水準にとどまっています。進学率を維持・向上させるには、学費の抑制は重要です。

一方、大学を「日本の科学・技術をリードする研究機関」と位置づけるなら、学費を値上げし、その増収分を研究や教員の待遇改善に使って、研究をレベルアップさせるべきでしょう。

個人的には、150万円と言わず300万円くらいまで値上げし、アジア最高額にするべきだと思います。知識社会の現代では、大学の競争力が国家の競争力に直結しており、大学の収入基盤を改革しないと日本全体がジリ貧になってしまうからです。学費だけでなく、低迷する特許収入についても改革を期待します。

もちろん、値上げによって優秀な高校生が経済的な理由で進学を断念することがあってはいけません。値上げと同時に給付型の奨学金を大幅に拡充する必要があります。また、研究機関として価値のない大学を思い切って縮小・廃止するべきでしょう。

ところで今回、少し意外だったのは、伊藤氏の提言に対し一般国民から強い反発があった一方、当の大学関係者からはほとんど意見表明がないことです。

自由な研究ができ、大学も教員も収入が増えるのは大学にとって好都合なはずですが、学生数が減ることを懸念しているのでしょうか。国際的な競争を警戒しているのでしょうか。微妙な問題なので大学から箝口令が敷かれているのでしょうか。ともあれ、議論が盛り上がっていないのは残念なことです。

大学は企業と並ぶ国家の命運を左右する存在。この機会に、国家百年の計として大学と学費のあり方をゼロベースで検討したいものです。

日沖 健:経営コンサルタント

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