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子どもと接する仕事に「性犯罪歴を確認」する是非 小児性愛型の同種再犯率は5年間で5.9%

東洋経済オンライン / 2024年5月24日 17時0分

DBSによって犯罪防止のために就業へのハードルを高くしてしまうと、それは逆に再犯リスクを高めてしまうことにつながるのだ。

性犯罪の前歴チェックに課題

第2に、「性犯罪の前歴」をどのように定義するか、そしていつまで前歴をチェックするのかという問題だ。

法案では、拘禁刑のほか、罰金や執行猶予まで含むとされており、不起訴になったケースまでは含まれない。たとえば、被害者との間で示談が成立し、犯罪事実はあったとしてもそれが軽微で、被害者が寛恕の心を示しているのであれば、不起訴となることはめずらしくない。

あるいは、いったん嫌疑がかかったとしても、証拠が不十分であったり、犯罪事実がないことがわかって不起訴となったりするケースもある。この場合、冤罪のケースも含まれるだろうから、不起訴になった場合にまで対象を広げることは不可能だろう。

犯歴が照会される期間については、法案では拘禁刑が20年、執行猶予と罰金は10年間とされている。これに対し、「20年や10年では短すぎる。一生、子どもに近づく仕事には就けないようにしてほしい」という意見も根強い。

一方、刑法では、刑の執行を終えてから罰金以上の刑に処せられることなく10年が過ぎれば、刑が消滅する(前科がなくなる)ことが定められている。20年間の長きにわたって犯歴が照会されるというのは、通常の犯罪ではありえないことで、人権上の問題が指摘されている。

第3に、対象となる罪種も限定されている。法案では、子どもに対する性犯罪、児童ポルノ所持などに加えて、痴漢のような条例違反も対象となったが、下着窃盗などは除外された。

性犯罪は、同種事犯を繰り返す者がいる一方で、多種多様な別の犯罪に手を染める者もいる。今回は下着窃盗の事案であっても、次は別の性犯罪に及ぶ危険性がないとは言い切れないため、この線引きには合理性が乏しい。

性犯罪は発覚しない件数が多い

このように、日本版DBSによって、憲法の保障する職業選択の自由を制限し、長きにわたって犯歴という個人情報を他者に提供するという「大ナタ」を振るうには、抑制的でなければならない一方、抑制的になれば「網の目」が広くなってしまって、取りこぼしがあるリスクがある。

さらに、性犯罪は暗数が多いことで知られる。発覚していない犯罪が多数あるということだ。これは被害者が恐怖心や羞恥心から被害を届け出ないこともあるし、届け出たとしても加害者の検挙に至らないということもある。

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