子どもと接する仕事に「性犯罪歴を確認」する是非 小児性愛型の同種再犯率は5年間で5.9%
東洋経済オンライン / 2024年5月24日 17時0分
子どもの場合は特に、被害を受けていてもそれが性加害だと認識できなければ、加害者を取り締まることができない。このような場合は、当然犯歴として残らないため、網の目をかいくぐって性犯罪を続ける可能性もある。
このように、DBSには現実的な限界や人権上の懸念があり、その導入が期待されているものの、その効果は万全からは程遠いと言わざるを得ない。しかし、それを補完する方法がある。
先に、性犯罪対策は厳罰的・抑止的アプローチのほかに、治療的・再統合的アプローチがあると述べた。これらは排他的で二項対立的なものではなく、それぞれの利点を生かして補完し合うべきものだ。
DBSという制限的な方法を実施するのならば、それと抱き合わせて、治療や福祉のようなヒューマンサービスを一層充実化させるべきだ。これが、DBSの限界を補うことにもなる。
代わりの職業への就職サポートを
たとえば、職業選択の自由を制限するのであれば、代わりの職業に就きやすくするための、職業訓練や就労支援を併せて行うべきだ。先に述べたように、就労の機会を剥奪すれば、社会から孤立した元犯罪者の再犯リスクが格段に高くなるからだ。そして、本人が社会復帰を遂げ、社会に再統合されるには、就労が一番身近で現実的な方法だからだ。
犯罪者を憎み、社会から排除するだけでは、犯罪は決してなくならない。ひとたび犯罪に手を染めたとしても、反省し罪を償った後に社会に戻ってきたとき、その者に居場所や活躍できる場所を提供し、社会が彼らを受け入れる必要がある。そうして初めて、本人もその居場所や社会的なつながりを愛し、それらを失うことを恐れるため、犯罪というリスクを冒さなくなるのだ。
そして、もう1つの重要な対策は治療だ。これはいくら強調してもしすぎることはない。数々の性犯罪対策のなかでも、最も確実な効果があるのは治療だ。刑務所に10年20年入ったとしても、あるいは生涯にわたって子どもと接触する職場から追放したとしても、本人の問題性自体が自然に変化するわけではない。
犯罪に至ったパーソナリティの問題、逸脱した性的衝動、認知のゆがみ、不適切な行動パターンなど、犯罪に関連する根本的な問題を修正しなければ、再犯のリスクは高いままだ。
現在刑務所などでは、認知行動療法という心理療法が実施されているが、それは再犯率を30ポイント程度下げる効果があることが明らかになっている。しかし、刑務所に入った全員が治療プログラムを受講できるわけではないし、出所すれば治療を受ける機会は閉ざされる。また、執行猶予や罰金で済んだものは、そもそも治療を受ける機会すらない。
治療サービスの拡充が効果的な対策
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