「カスハラ」法整備でもそう簡単に解決しない事情 「お客様は神様」で生きてきた中高年の壁も
東洋経済オンライン / 2024年5月26日 12時30分
22日、東京都が全国初となる「カスタマーハラスメント防止条例」の制定を目指す会議を開き、基本方針などが報じられました。
その主な内容は、民間企業の職員と顧客だけでなく、受発注関係にある事業者、公務員と住民、議員と行政職員など、あらゆる職場の間柄におけるカスタマーハラスメント(以降、カスハラに略)を禁じることや、職員を守る企業側の責務規定、防止に向けたガイドラインなどの対策。今回の方針をベースに条例案を策定し、今秋における都議会での成立を目指し、さらに全国への波及が期待されています。
さらに同日、参院予算委員会で岸田文雄首相がカスハラへの対策について「現在、厚生労働省の検討会が議論されており、専門家の議論を踏まえ、法整備も含め必要な対応を検討する」という方針を述べたことが報じられました。
厚生労働省の実態調査などでは「カスハラの深刻度はパワハラやセクハラ以上」とも言われるなど、社会問題化しつつあるのは間違いないでしょう。どんな実態と問題があり、都や国の対応で何が求められているのか。
長年、お悩みコンサルをしている私のもとにも、カスハラに苦しめられる人からの相談も多く、そこで見えた傾向も含めて掘り下げていきます。
線引きが難しく我慢を強いられる
21日、私鉄各社が加盟する日本民営鉄道協会が昨年、大手私鉄16社などで駅員や乗務員に対する暴力行為が144件発生したことを発表しました。コロナ禍に突入した2020年に減少して以降3年連続で増加し、発生の経緯では「理由なく突然に」「酩酊者に近づいて」「迷惑行為を注意して」が多かったという点に深刻さが表れています。
また、16日にも、神奈川県座間市にある創業57年の老舗銭湯「亀の湯」がカスハラなどを理由に「営業を続ける意欲がなくなった」と閉店を発表。これが報じられるとすぐに物議を醸したことは記憶に新しいところです。
そもそもカスタマーハラスメントは、顧客が企業の従業員に不当な苦痛を与えたり、悪質なクレームをつけたりする行為であり、心身にストレスを与えるほか、離職の理由としてあげられるケースも少なくありません。なかには心を病んでしまう人もいるなど、単なる嫌がらせではなく、強要罪や脅迫罪、業務妨害罪、暴行罪や傷害罪などに該当しうるようなケースも散見されます。
厚生労働省が掲げるカスハラの定義は、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」。
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