サンマ漁獲枠を削減でも「獲り放題」の残念な実態 魚が減っていく本当の理由が知られていない
東洋経済オンライン / 2024年5月29日 11時0分
「過去最低の漁獲量」「歴史的不漁」といった言葉が、サンマをはじめ、さまざまな魚種で、かつ全国で毎年のように出てくる日本の漁業。前年度より少しでも漁獲量が増えただけで、分母が小さくなったことを考慮せずに「前年比〇%増」「前年比〇倍」などと報道されます。
しかしながら、数十年という長いスパンで見れば大した増加ではなく、逆に大きく減少しています。そして数年たつと漁獲量はさらに減るという負の連鎖の繰り返しです。
これは、国際的な視点でみると、科学的根拠に基づく漁業管理・数量管理を怠ってきた結果にほかなりません。魚が減っていく本当の理由について社会的に誤解が広がっていることが「大問題」なのです。
サンマは実質「獲り放題」のまま
2024年4月15日から18日にかけて北太平洋漁業委員会(NPFC)の年次会合が大阪で開催されました。そこで、不漁が続き危機に瀕しているサンマの漁獲可能量(TAC)について、日本・中国・台湾をはじめ9カ国・地域で会議が行われました。
決まった内容は、公海上のTACが前年の15万トンから10%減の13.5万トンに削減され、これに日本の排他的経済水域内でのTACを加えると、全体では同10%減の22.5万トンまでは漁獲可能というものです。昨年も同25%減だったため漁獲可能量「削減」という報道だけ見ると、資源管理が進んでいるように感じられるかもしれません。
しかしながら、昨年のサンマの漁獲量は全体で12万トンしかなく、資源の減少が止まらない環境下で、漁獲枠が22.5万トンでは実質「獲り放題」のままなので、資源管理の効果は出ないのです。
「漁獲枠削減」という方向性は間違っていないのですが、効果がない数量管理で資源が回復するはずはありません。資源が減ったのでTACを減らす。しかしそのTACが大きすぎて効果はない。資源が減ってさらにTACを減らす——という「いたちごっこ」が繰り返されているのです。
国ごとにTACを決めることは、国益が絡むため非常に難しいです。しかしながら、国民が資源管理の重要性に気づいておらず、サンマが獲れないのは海水温上昇や中国のせいと信じているようでは、サンマに限らず水産資源の先行きは非常に暗いです。
そこで国民に資源管理の正しい知識を広めることが、国際的な青魚の漁業・水産関係者と長年にわたり太いパイプを持つ、筆者の重要な役目と思料しています。
今回の漁獲枠削減による効果があるのか?
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