他人事ではない「水原一平騒動」に経営者が学ぶ事 問題点はチーム大谷のガバナンス欠落にある
東洋経済オンライン / 2024年5月30日 10時0分
ところが訴状によると、CAAスポーツは大谷選手の代理人であるにもかかわらず、日本語を話せるスタッフを雇用していなかったそうです。
さらに、日頃から密なコミュニケーションを持つことが大切な大谷選手と直接話すことはなく、すべて通訳である水原氏を介してコミュニケーションが取られていたとされています。
エージェント側にも、英語が堪能ではない大谷選手とコミュニケーションを取るために、日本語が話せるスタッフは必須なのではないでしょうか。
大谷選手が所属するドジャースの本拠地、カリフォルニア州における日本語通訳の年収は、650万円から1250万円ほどだと言われています。それにもかかわらず、水原氏の通訳だけに頼っていたことに、衝撃を受けた人は多いことでしょう。
「大手に任せておけば安心だ」――。中身を見ずに外見だけで業者選択をする経営者の方は多いのではないでしょうか。
しかし、大手だからといって常に最高のサービスを提供できるわけではありません。看板だけではなく中身を精査することができれば、今回の悲劇は防げた可能性もあったのかもしれません。
もう1つ、今回の不正を見抜けなかった問題点として、弁護士や会計士の存在もあります。
弁護士は、常にクライアントの利益を優先する必要があります。本来であれば、大谷選手の会計担当者やファイナンシャルアドバイザーは、クライアントである大谷選手によって直接雇用され、大谷選手の利益を優先して仕事をする必要があります。
会計担当は大谷選手と一度会っただけ
ところが訴状によると、彼らを雇用していたのは代理人であるCAAスポーツだったことがわかりました。
訴状によると、会計担当者は大谷選手とは最初の顔合わせで一度会っただけでした。後日、税務申告について大谷選手と話すために会いに行ったところ、水原氏が対応し、大谷選手は病気で給与口座のことは本人がプライベートにしたい、そして税務申告上の問題もないと回答し、この会計担当者は引き下がったとのことです。
会計担当者は、本来であればクライアントであるはずの大谷選手の利益を優先すべきところが、直接的な雇用主である代理人の顔色を窺っていたのかもしれません。
ことを荒立てないで自分の雇用維持を優先したような状況があったのかも含め、利益相反の観点で厳しく検証される必要があると思います。
私のクライアントである大谷選手に会わせてほしい。あなたは私のクライアントの通訳であって、私のクライアントではない! そんなふうにNO!と言えるプロフェッショナルがいれば、状況は変わっていたかもしれません。
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