今年もまた繰り返すの?財政検証後の年金叩き 5年前に「答え」を書いた資料をいまだ放置
東洋経済オンライン / 2024年5月30日 8時0分
そうした具体的な話を教えてくれるのが、公的年金シミュレーターです。
1年に1度お誕生日のときに送られてくるねんきん定期便。もし手元にあるなら、その中にあるQRコードをぜひスマートフォンで読み取ってみてください。持っていなくても大丈夫。将来の自分のライフプランに応じて、自分の年金給付水準にびっくりするような変化が起こることを公的年金シミュレーターは教えてくれます。だまされたと思ってお試しあれ!
今話題にしている5年前の財政検証で作られた資料4の中には、先に小野委員も会議で触れられていた「多様な世帯類型における所得代替率」の資料もあります。これはとても価値あるものです。彼は、第9回年金部会(2023年11月21日)で次の発言をされていました。
2019年財政検証の際に、年金局から財政検証関連資料というのが公表されまして、その中に多様な世帯類型における所得代替率という資料がありました。この資料は、現在の議論に真摯に応えたものだと私は思っていますけれども、ここまでしても社会の理解が得られないのはなぜなのかというのが非常に疑問であります。
「ここまでしても」という資料が、「多様な世帯類型における所得代替率」(資料4の12〜19ページ)という、年金局の力作でした。
これまで、このオンライン記事で何度か論じてきたように、日本の公的年金の負担と給付の根本原則は、賃金水準(1人当たり)が同じであれば、どの世帯類型でも保険料の負担、年金月額、所得代替率は同じというものです。所得代替率や年金月額の違いは、片働き世帯とか共働き世帯というような世帯類型とはまったく関係ないんですね。
ところが、世の中では、「昔は専業主婦世帯が普通だったのに、今は共働き世帯が一般的になってきた。だから、年金を時代に合わせて変えなければならない」という話が、いかにももっともらしく言われていたりしています。でも、これは、完全に間違えている話なわけです。
そこで、年金局は、2019年の財政検証の時に次のような資料を作っていました。
資料4では、賃金水準はいろいろとバリエーションが挙げられているわけですが、例えば今、賃金月額が32.9万円~54.9万円の夫婦世帯があるとします(『国民生活基礎調査』からのデータに基づいています)。この世帯は、日本の公的年金では、単身または1人分の16.5万円~27.4万円となる世帯と同等に扱われることになります。
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