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「ステージ4」膵臓がん患者が沖縄に"旅立つ"心境 旅先で最期を迎えることになるかもしれない

東洋経済オンライン / 2024年5月31日 14時0分

そんなとき、愛里さんはネット検索で「日本ツアーナースセンター」の存在を知る。

「きれいなホームページだし。ハードルが高そうだなって、初めはすごく不安だったのですが、連絡を取ってみると、とても親切で、いろいろとアドバイスしてくれました」(愛里さん)

稲本家の沖縄旅行を担当することになった日本ツアーナースセンター、看護師長の細山理恵看護師はこう語る。

「がん終末期の患者さんのご状態は様々です。事前に担当医師から稲本さんのことをお聞きすると、とても厳しい状態でした。沖縄までは長距離で、もし途中何かあれば、思いを叶えることができなくなってしまう、どうにか移動に時間がかからない場所で思いを叶えられることはないか、娘さんにお聞きしながら、提案しました」

沖縄でなくても家族の思い出の場所は他にもあるかもしれない。海が見たいのであれば、近くに適した場所があるかもしれない。様々な可能性を考慮して、看護師としての意見を述べた。しかし、愛里さんの決心は固かった。

──お父さんの思いを叶えたい。

その強い意思を感じた細山看護師は、最後まで支えることを決心したのだった。

沖縄旅行の計画は4泊5日の日程を組んだ。ホテルの予約はすんなり終わった。問題は行きと帰りの移動だ。今回は電車と船の旅である。片道30時間もかかる。自宅から新横浜までの介護タクシー。新横浜から小倉までは東海道新幹線。そこから鹿児島までは九州新幹線。列車の旅では、それぞれ多目的室の予約が必要だ 。それらもなんとか手配することができた。しかしそれだけでは済まない。

鹿児島から沖縄までの行き帰りはフェリーでの移動となる。その船中泊も合わせると、7日間の長旅となるわけだが、ツアーナースは医療保険がきかない 。旅行の間ずっとツアーナースがつきっきりでは費用がかさんでしまう。

「だから、沖縄にいる4日間は、医療保険が使える現地の訪問看護をお願いするといいですよって、細山さんにアドバイスをもらったんです」(愛里さん)

そうすれば、自費となるツアーナース費用は、行き帰りの2日分だけで済ませることができる。ただ、沖縄の訪問看護師に知り合いがいるわけではない。愛里さんは片っ端から電話をかけて、4日間だけ通ってくれる訪問看護師を探した。

そしてたどり着いたのが、「ひまわり訪問看護ステーション(沖縄県国頭郡)」だった。

「ホテルからもそれほど離れておらず行き来できる場所にあり 、電話をかけて事情を話したら快諾してくれました」(愛里さん)

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