60歳で難病「岸博幸さん」残りの人生の"優先順位" 病になって気づいた事、インタビュー前編
東洋経済オンライン / 2024年6月4日 9時30分
60歳で多発性骨髄腫という難病が発覚した元官僚・慶応義塾大学大学院教授の岸博幸さん。主治医から10~15年という“余命宣言”を受けたことで自らの人生を振り返り、やめたこと・始めたことを自著『余命十年』にまとめた。自身の闘病経験を踏まえて、若い人たちに伝えておきたい“遺言”とは――。インタビューを2回にわたってお届けする(前後編の前編)。
後編:岸博幸氏「高齢者の社会保険料」一律支援は限界だ
60歳になるまで病院とは無縁だった
――2023年1月にがんを告知されました。
【写真】インタビュー中の岸博幸さん。病気との向き合い方や、日本の医療制度、今後の生き方について語る。
その前に、何でこの本を出したか少し説明させてください。
実は、個人的には(本を)出したくなかったんですよ。病気をウリにする気はないし、同情してって思っているわけでもないから。でも、病気になって貴重な経験をしたので、それを残しておくのは何らかの意味があるかな、と思ったんですね。
それで、告知の話だけれど、やっぱりショックでしたよ。
僕は一昨年に60歳になったけれど、同世代に比べて体力は多分、抜群に高いほうだと思う。若い頃はロッククライミングでハードなトレーニングをしていたし、50代になってからはキックボクシングもしていた。
病院にもまったく無縁で、どっちかというと健康保険料をムダに払い続けた人間だった。
【写真】病気との向き合い方や、日本の医療制度、今後の生き方について語る岸博幸さん(8枚)
けれども、それが突然こうなっちゃった。主治医から「あと10年、15年だよ」って命の期限を設定されたときは、さすがに驚いたし、ショックでした。
――それと同時に、“腑に落ちた”ことがあったんですよね。
そう。心当たりがあったから。
まず、あの時期ってやたら疲れやすかったんですよ。僕が出ている「ミヤネ屋」の話でいうと、あの番組って基本的に台本がなくて、どこで振られるかわからない。
集中力と瞬発力が勝負で、2時間も続くと結構、疲れるんです。以前はそれでも元気だったのが、1年ほど前から帰りの飛行機で寝るようになったんです。やっぱり年なのかなって。
あと、まわりから「顔色が悪い」とも言われていましたね。これも年だから……と思っていたけれど、やっぱり気になる。それでたまたま人間ドックを受けたら、病気がわかった。そういう意味では、年齢のせいじゃなかった、原因があったんだ、とは思いましたね。
吐き気と口内炎で食べられない状態が続く
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