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岸博幸氏「高齢者の社会保険料」一律支援は限界だ 治療の費用で実感した事、インタビュー後編

東洋経済オンライン / 2024年6月5日 12時0分

岸博幸さん(撮影:今井康一)

60歳で多発性骨髄腫という難病が発覚した元官僚・慶応義塾大学大学院教授の岸博幸さん。主治医から10~15年という“余命宣言”を受けたことで自らの人生を振り返り、やめたこと・始めたことを自著『余命十年』にまとめた。自身の闘病経験を踏まえて、若い人たちに伝えておきたい“遺言”とは――。インタビューを2回にわたってお届けする(前後編の後編)。

前編:60歳で難病「岸博幸さん」残りの人生の"優先順位"

財政は厳しいのに、手厚すぎて心配

――今回の治療では、けっこうなお金がかかったのではないでしょうか。

【写真】インタビュー中の岸博幸さん。病気との向き合い方や、日本の医療制度、今後の生き方について語る。

かかりましたね。正確な金額は覚えてないけれど。日本の社会保障はしっかりしているんだなって、病気になって改めて実感しました。

例えば高額療養費制度って、月の負担が一定額を超えたら、その分は社会保険料から補填される。僕の場合は1年間の治療費がトータルで4桁(1000万円)いってたから、それがなかったらたいへんだったと思う。

【写真】病気との向き合い方や、日本の医療制度、今後の生き方について語る岸博幸さん(9枚)

今も多量の薬を飲んでいるし、注射も打っているから、毎月70万~80万円はかかっている。それが20万円ぐらいですんでいるんだから、本当にいい制度だと思います。

やっぱり日本の社会保障制度はしっかり整備されていて、メリットが大きい。逆に言えば、メリットが大きすぎて大丈夫かな、とも思うよね。

高齢化が進んで病院には人がたくさん来るし、高額な治療が増えている。そうじゃなくても日本は財政が厳しいのに、こんなに手厚くて大丈夫なのかって、心配になりますね。

――国の政策に関わることがある岸さんとしては、どうすればこの社会保障制度が維持できると思いますか?

ここが本当に難しくて……。僕自身がこういう治療をして、制度を利用した経験から言うけど、高額な薬を全部保険の対象にするのは無理があるよね。

ただ、これに対する明確な“解”ってなくて、少なくとも所得や資産が多い人は自己負担額を増やすしかないんじゃないかなって、思っています。これは年金制度にも共通する問題なんですけれども。

例えば、高齢者。今は自己負担率が1割か2割で、現役世代よりも安いでしょ。これって本来はおかしいんだよね。だって、高齢者のほうが金融資産を持っている割合が大きいんだもん。

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