「低年収の若者」無視した少子化対策が意味ない訳 高年収帯しか子育て世帯が増えていない現実
東洋経済オンライン / 2024年6月9日 12時10分
最近、「若者が子どもをほしがっていない」という民間会社の調査結果が話題となりました。しかし、これだけで、昨今の少子化は「若者の子ども離れ」などと若者の価値観のせいとするのは短絡的です。
そもそも、2021年出生動向基本調査によれば、結婚を希望する18~34歳の独身男女若者に限れば、そのうちの約9割は「子どもがほしい」と回答しています。結婚したいと思う若者は子どもも欲しているのであり、子どもがほしい割合が減っているのだとしたら、それは「結婚を希望していたのに結果できなかった不本意未婚が子どもの希望もなかったことにする」ということではないかと思います。
問題として認識すべきは「結婚をし、子どもも希望している9割がまず結婚できていない」ことのほうであり、その結果として出生数が減少しているという事実です。
若者の婚姻減に影響を及ぼす「お金の問題」
少子化の話題でよく出てくる合計特殊出生率という数字ですが、あれは計算分母に未婚女性を含むものであり、未婚率が高まれば自動的に減ります。逆にいえば、結婚した女性が産む子どもの数は、1980年代と比較しても変わりません。
要するに、出生率が減っているのは、婚姻数の減少でほぼ説明がつくものであり、少子化対策を論じるのであれば、子育て支援云々以前にまず若者の婚姻環境はどうなのかを見つめる必要があります。そして、若者の婚姻減の原因を突き詰めていけば、必ず若者の経済環境、つまり「お金の問題」に行きつきます。もちろん婚姻減はお金の問題だけではないですが、「お金の問題」が近年大きな影響を及ぼしています。
まず、若者にしてみれば、結婚の意欲も子どもの希望も「お金の問題」と密接に関係します。20代の未婚男女を対象に、結婚の意欲と子どもの希望を年収別にクロス集計したもので見ていきましょう。
まず、「結婚に前向き」な層は、男性で7割、女性では8割が「子どもがほしい」と思っています。その中で、男性に関していえば、年収300万円未満は64%ともっとも低く、300~500万で71%、500万円以上の年収では78%が「子どもがほしい」と年収に応じて希望率も高まります。逆に、女性は年収の多寡で子どもの希望に大きな違いはありません。
一方、「結婚後ろ向き」かつ「子どもはほしくない」と回答している男女とも、年収が低いほどその割合が高まっています。
年収300万~400万円帯の婚姻が増えない
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