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年収500万の公務員が「貧困取材」を受ける事情 生きづらさは「日本特有の人間関係」にある?

東洋経済オンライン / 2024年6月13日 11時0分

「『視覚障害=全盲』という私の無知もありました。でも、上司の鬼のような形相を思い出すと今でも恐ろしいです」

人間関係のトラブルに見舞われることの多い自分には何か問題があるのではないか――。そういえば以前、職場の産業医からも「一方的に話をする」と指摘された。同僚へのパワハラ問題を受け、あらためて産業医に相談したところ、発達障害の可能性を示唆された。早速専門の医療機関を受診、発達障害と診断されたのが数年前のことだという。

「さんざんやらかしてきた」というシンイチさんの半生はどのようなものだったのか。

子ども時代の通知表は、成績はともかく教師による所見は「落ち着きがありません」「ケアレスミスが目立ちます」「友達とうまく遊べません」などさんざんだった。シンイチさんは「たしかに、アザのある子に向かって『変なアザ』などと、思ったことを考えなしに口にするところがありました」と反省を込めて語る。

大学時代のアルバイトも人間関係で苦労した。更衣室で「あいつのせいで空気が悪くなる」と自分の悪口を言っていた相手を直接問い詰めたり、塾講師では「小太りで黒縁眼鏡」という当時の外見を生徒たちから執拗に揶揄されたりして、いずれも長く続かなかった。一方で服装や締め切りに関する指示を忘れて、失敗したこともあったという。

こうした経験から、日本で就職することに不安を覚えたシンイチさん。大学で親しくなった友人が在日韓国人で、大学院では言語学を専攻していたため、修了後は思い切って韓国の大学で日本語を教えることにした。

現地での年収は300万円ほどだったが、20年以上前の当時は物価も家賃も安かった。学生や同僚との関係も良好で、仕事は楽しかったという。唯一の難点は1年契約の非常勤講師だったこと。30代半ばを過ぎ、安定した仕事に就こうと公務員の採用試験を受けた。

地方自治体に転職したのは約10年前。ここから本格的な「やらかし」が始まる。

「習うより慣れろ」の新人教育

シンイチさんによると、まず「習うより慣れろ」という公務職場の新人教育の方法になじめなかった。マニュアルを読んでも理解できない点やパソコン操作や書類作成の手順の根拠を尋ねると「とりあえずやって」と返される。明確な答えがないと不安になるというシンイチさんがなおも質問を重ねると「つべこべ言わずにやれ」と煙たがられるようになった。

早々に「めんどくさい人」とのレッテルが貼られる中、友人の結婚式に出席するために有給休暇を申請したところ、上司から「今は仕事に集中するべきだ」と阻まれた。直接言われたわけではないが「仕事もできないくせに生意気だ」という本音を感じたという。

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