「りんご」の鉄瓶が伝統工芸の世界にもたらす新風 大学やスタートアップと連携しAI活用も模索
東洋経済オンライン / 2024年6月14日 12時0分
大谷翔平選手のInstagram投稿で話題になった南部鉄器は、400年以上の長い歴史を持つ岩手県の伝統工芸だ。その南部鉄器の世界では近年、若手職人によるイノベーションが起きている。
【写真で見る】りんごのフォルムが可愛らしい鉄瓶「あかいりんご」。スタイリッシュでインテリアにもなじみやすくヒット商品に
盛岡市の南部鉄器職人、田山貴紘さんもその一人。AIを活用して新たな職人育成の仕組みを構築し、持続可能な伝統工芸のありかたを追求している田山さんに話を聞いた。
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前回の記事:大谷選手Instaで話題の「南部鉄器」9代目の挑戦
南部鉄器の歴史に2つの産地
昭和のころには全国の家々にあった黒い鉄瓶の多くは岩手県で作られた南部鉄器。その産地は、盛岡市と奥州市。
江戸時代、城下町・盛岡では、この地を治めた「南部」藩の藩主が京都から茶の湯の釜を作る職人を招いたのが始まりだ。
一方、岩手県「南部」の奥州市では、平安時代の終わりごろに奥州藤原氏のもとで武器を作ったのが発祥とされ、江戸時代には伊達藩の庇護のもと、庶民が使う農具や暮らしの道具が作られた。
しかし近代になると取りまく環境は一転。人々の生活様式の変化に加え、戦時中は軍需最優先のため、原材料の鉄はもちろんのこと、鍋や釜まで供出され、1941年には鉄器製造が禁止されるなど、存続が危ぶまれる状況に陥った。
【写真】盛岡市の南部鉄器職人、田山貴紘さんの工房や、人気商品の様子(9枚)
技術を途絶えさせないため、1959年に盛岡と奥州、両地域の鋳物組合が共同で「岩手県南部鉄器協同組合連合会」を設立。これが現在知られる「南部鉄器」という名称の始まりとなる。
つまり、来歴の異なる2つの産地で作られた製品の総称が「南部鉄器」。
川の砂と水と粘土を使い、手作業で鋳型から作る伝統技法にこだわる小規模な工房から、工業化によって比較的、安価な製品を作ることのできるメーカーまで大小さまざまな製造元がある。
ひと口に鉄瓶と言っても、1万円前後のものから数十万円のものまでさまざまなのは、こういった事情がある。
鉄瓶めぐる多角経営で起業
そのような中、「kanakeno」のブランドで鉄瓶を製造・販売する南部鉄器職人の田山貴紘さん(盛岡市)は、職人が1つひとつ手づくりする昔ながらの伝統的な技法にこだわって事業を展開。
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