BMWが誇る「M」を冠するスーパーバイクの実力 雨の「もてぎ」で元GPライダー先導で試乗した
東洋経済オンライン / 2024年6月16日 8時20分
ブルーに染められたキャリパーを備えるMブレーキ・システムも、まるでブレーキディスクに直に触るようにシルキーなタッチで扱いやすい。エンジンはトップエンドの出力を削って201馬力に抑えているのだが、自分が所有する先代S 1000 XRの160馬力に比べパワフルなことは如実に体験できた。
ストレート・エンドにおける速度は時速170キロメートル程度だったが、Mウィングレットと電子制御ダンパーの効果により不安定な印象は少しも抱かなかった。
続いて走らせたのは、最上位に位置するM 1000 RR。XRに比べて30kg以上も軽い。サイドスタンドを跳ね上げて車体を起こす時点からその違いを感じる。
これが車両本体価格448万8500円(Mコンペティション・パッケージ。標準型は384万9500円)、スーパーバイクのベースマシンか、と感慨に耽りながらクラッチをミートしたところでエンジンストール(エンスト)してしまった。
フライホイールの重量を削ってあるせいか、リッターバイクといえど発進には気を遣わなければならない。本格的なスポーツ走行に合わせてシート高もけっこう高いから、立ちゴケには要注意である。
「ここまでやるのか」という技術へのこだわり
M 1000 RR用に限定製作されたエンジンは、元々BMWが技術の粋を注ぎ込んだS 1000 RRのエンジンにさらなるチューニングを施したものだ。雄々しくも整然とした排気音や放たれるパワー自体はほかのMシリーズと大きく変わらないように思えたものの、顕著な違いを感じたのは加速を終えスロットルを閉じて、エンジンブレーキを生じながらカーブへ進入していくシーン。
ほかの2モデルに比べて振動が少なくよりスムーズだった。バイクの姿勢が不安定でセンシティブな状況では、少しでもトルク変動が少ないほうがありがたい。
このセッションで先導を務めてくれた、元世界GPライダーで“青木三兄弟”の長男である青木宣篤選手にそのことを告げると、「ああ、そういう違いはあると思いますよ。BMWはMのチームと一緒に、そうした電子制御の作り込みを本当に丁寧にやっているのだと思います。ほかのメーカーのスーパーバイクと比べても、『ここまでやるのか』という技術へのこだわりは凄いですね」と同意してくれた。
ストレート・エンドでは、ライダーの負担を低減させるために採用されたハイ・ウィンドシールドの背後にヘルメットを埋め、カーボンパネルをまとったタンクの上に身を伏せる。
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