「戦力の集中」運用に背いたゆえのミッドウェー敗戦 空母4隻と2隻に分けたことがそもそもの敗因
東洋経済オンライン / 2024年6月16日 9時0分
その合間に攻撃部隊は発艦できる。実戦例のように空襲下の兵装転換が10時30分になっても終わらず攻撃部隊を出せないままの事態は生じない。
防衛にも成功する
先制撃破は間違いない。米空母攻撃部隊の規模も増大するからである。集中運用により艦上待機中の航空機は実戦例の103機から130機以上に増える。
艦上攻撃機43機、艦上爆撃機36機、艦上戦闘機24機から、北方部隊の「隼鷹」と「龍驤」の艦攻と艦爆の半分にあたる9機と8機、艦戦12機を足した132機となる。当時の海軍航空隊なら米空母3隻すべて撃破できる。
第2に、日本側防衛も成功する。米空母の先制撃破に失敗しても、その後のアメリカ軍の空母航空部隊の攻撃に耐えきるからである。これも集中運用がもたらす効果である。
最初に防空戦が有利となる。空母2隻の追加により艦隊の戦闘機数は実戦例の82機から118機まで増える。
迎撃に参加する戦闘機数も実戦例の34機超から単純計算で48機超まで増加する。ちなみに、北方部隊の艦上戦闘機もすべてゼロ戦である。
水上艦の増勢もそれなりの効果を生む。北方部隊をすべて編入した場合、南雲艦隊の水上艦数は実戦例の17隻から35隻になる。
有効な対空射撃能力を持つ戦艦と重巡洋艦の数は4隻から7隻に増える。当時の軽巡洋艦と駆逐艦には対空戦はあまり期待できないが、それでも対空監視は充実する。
敗因のうちの対空警戒不充分も解消する。実戦例では10時20分と17時01分にあったアメリカの急降下爆撃機を2回とも見逃したため日本空母は全滅した。
前者がいわゆる「運命の5分間」である。それが戦闘機数増加と水上艦増勢で改善する。発見と迎撃の見込みが立つのである。
次に損害も限定的となる。空母の数が4隻から6隻に増えれば、実戦例どおり最初の急降下爆撃で日本空母3隻撃破となっても3隻残る。
以降にも上空で警戒迎撃にあたる戦闘機数は「飛龍」1隻ぶんから、生き残った空母3隻ぶんに増える。それにより2回目の急降下爆撃の迎撃阻止は容易になるうえ、仮に1隻沈んでも、なお2隻は残る。
爆弾被害が小被害で済むかもしれない。日本空母の数が増えればアメリカ機の目標も分散する。最初の急降下爆撃では39機が空母3隻を狙い命中10発、2回目の攻撃では40機が残る1隻を狙い命中4発を得ている。
その目標となる空母数が増えると1隻あたりの投弾数は減る。少数投下であれば命中なし、あるいは1発命中で切り抜る空母が出るかもしれない。
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