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「社会的地位のための結婚」規範が根強く残る背景 「そうであるべき」人生モデルからの解放を

東洋経済オンライン / 2024年6月17日 10時30分

さて、冒頭の「社会的地位のための結婚」に戻ってみましょう。ここでは、社会的地位というものは、年齢や性別といったものによってある役割を振り分け、その役割に沿った行動をするものに与えられる、とも捉えられます。

エイジズムという言葉はある年齢にステレオタイプをはめ込み、それによって差別したり、扱いが変わることであり、高齢者も若者も、ミドル期も、誰でもそれに該当する、と言われています。

どんな年齢で何をするか、それをしないなら、どこかおかしい人と思われる、というのであれば、才能のある若者や元気な高齢者、そして地域で活躍したいミドル期シングルも、居場所、活躍する場をなくしてしまう可能性があります。

自分のことをわかってくれる少数の仲間たちとだけ付き合い、その他とはかかわらないでいよう、みえないでいよう、というのはなんとも残念です。人口減少が進み、気候変動等による苛烈な自然災害が頻発し、戦争がやまない世界の情勢などを見ていると、このようにひとつの「そうであるべき」人生モデルによって役割を規定してしまう余裕が私たちにはないように思えます。

すべての人が活躍、ということが簡単に言われますが、まずは、年齢やそれに紐づく婚姻状態で人々をステレオタイプ化せずに、個人として社会に認められることは大事です。

私がかつて暮らしていたアメリカの中規模の町では、地域の活動、NPOなどに多くのミドル期シングルが参加していました。知恵も体力もある彼らは、別にシングルだから、未婚だから、と臆することなく、むしろ主力メンバーとして、高齢者、家族、若者たちをリードしていました。

パートナーに出会っても出会わなくても

『東京ミドル期シングルの衝撃』で語られたシングル像は多様です。

結婚を望んでいるのに経済的に無理だと思う人、周囲を見ていて家族を作ることのわずらわしさを感じている人、なんとなく今に至る人、それらの人々も将来ずっとひとりでいることの不安は抱えています。

何歳になっても、ひとりで生き生きと暮らしていてもいい、パートナーに出会ってもよい、出会わなくてもよい、結婚という形態をとらなくても信頼して面倒なこともいっしょにできる人が、異性でも同性でもいていい、そして結婚していないということはひとつの個性であって、それだけで社会的に何かを示すものではない、ということが地域や社会で理解され、多様性が当たり前になることが、将来の姿として見いだせるようになる日は来るでしょうか。

それは1人ひとりの考え方の変化の積み重ねはもちろん、さまざまな制度の変更、多様なロールモデルの登場などを必要としているのです。

松本 奈何:都市研究者、明治大学専門職大学院ガバナンス研究科助教

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