70年代生まれ団塊Jr.世代が今なお割を食う事情 一発逆転狙う「地獄のスパイラル」の行く末
東洋経済オンライン / 2024年6月22日 9時30分
なぜいい年の大人が、一見、わかりやすくシンプルな詐欺に引っかかるのか。
もしかしたら、その背景には時代の空気があるのかもしれない――。
すでにインターネットはほぼ津々浦々まで普及し、最近では生成AIがみるみる進化するなか、いまだかつてなくネットを媒介した詐欺も多様化している。
そんな中「だましの手口」のケーススタディをふんだんに挙げつつ、この時代に「人々はいかにだまされるのか」を、心理学者らが体系的に考察した書『全員“カモ”』がベストセラーとなっている。
ますます巧妙化する詐欺、さらには「詐欺スレスレ」ともいえる企業マーケティングにからめとられないためには、どうしたらいいのか。
前編に続き、ジャーナリストで作家としても活躍する佐々木俊尚氏が、本書をもとに考察する。
詐欺師にとっては「いい時代」
もう20年ほども前の話ですが、架空の理由で金銭を要求するスパムメールの元締めを直当たりで取材したことがあります。その人は1980年代に「カラの(何も録画されていない)裏ビデオ」で荒稼ぎした罪で数年の懲役刑を言い渡され、出所して今度はスパムメールで稼いでいるという人でした。
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曰く、技術者を5人ほど雇って1日に送るスパムメールの数は約100万通。そのうち返信があるのは100人ほどで、さらにだまされてお金を払うのは2人程度。人件費や光熱費は1日当たり100万円。それで果たして儲けが出るのかというと、だまされるのは1日当たり100万人中2人であっても、その2名が100万円ずつ払ってくれたら合計200万円、経費を差し引いても1日に100万円の利益が出るという話でした。
999,998人は無視しても、2人が引っかかれば成立するビジネスモデル。本書にも類似ケースが紹介されていますが、この取材をした当時も不謹慎ながら「なるほどな」と納得してしまいました。
古今東西、「人をだます人」も「人にだまされやすい人」も存在してきました。この先も、おそらく両者とも消えてなくなることはないでしょう。それどころかテクノロジーがどんどん進化している現代は、詐欺師にとってはだまし放題の「いい時代」になっているといえます。
インターネット以前は、いわゆる「名簿屋」から仕入れた「過去にだまされたことのある人」の個人情報を頼りに、直に電話をかけたり、ダイレクトメールを送付したり、自宅を訪ねたりするというのが常套手段でした。「一度だまされた人は二度だまされる」というのが詐欺師の間の常識なので、「過去にだまされたことのある人」に当たるのがもっとも効率的だったわけです。
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