70年代生まれ団塊Jr.世代が今なお割を食う事情 一発逆転狙う「地獄のスパイラル」の行く末
東洋経済オンライン / 2024年6月22日 9時30分
しかし、現代の詐欺師の主戦場はインターネットです。名簿なんかで当たりをつけずとも、理論上は、全世界に散らばっているカモたちめがけて大きな網を投げることが可能になっている。先に紹介したスパムメールのビジネスモデルも、インターネットがなくては成立しません。ほんの2人を落とすために100万人に仕掛けるなど、電話・ダイレクトメール・訪問しかカモと接触する方法がなかった時代にはとうていできないことでした。
インターネットに加えて、昨今、目覚ましく進化している生成AIも、詐欺師にとって格好の詐欺ツールとなっていくでしょう。音声や画像をAIで自在に作成するなど、近い将来、オレオレ詐欺をはじめとする特殊詐欺がさらに巧妙化するのは間違いありません。
消費者をカモにしている企業
ところで、隙あらば人をカモにしようと目論んでいるのは詐欺師だけではありません。企業のマーケティングも、いってしまえば「いかに消費者をカモにするか」という発想であると見ることもできるでしょう。
たとえば本書の中でも挙げられている「本の帯の推薦文」や「ECサイトの星評価」。日本でも、著者の同業者や有名人の推薦文が記された帯をよく見かけます。同じ人が大量の本に推薦文を寄せているケースも珍しくありませんが、忙しい中で大量の本を読む時間を、その推薦者はどうやって捻出しているのか。本書の著者はこの点に疑問を投げかけ、「推薦文を書いている人の推薦文の信頼性は、その人が書いている推薦文の数に反比例する」と指摘しています。これには深く頷かされました。
また、ECサイトで買い物をする際、私たちはレビューや星評価を参考にしますが、気をつけて見ないと、無自覚のうちにカモにされる可能性があります。本書の著者はこの点についても、「(5つ星評価で)ポジティブな評価が大量に寄せられている場合、その評価は当てにならない」「むしろ2つ星や4つ星の評価を読んだほうが参考になる」と指摘しています。私もAmazonで本を買うときは、一応、星の数を参考にしますが、まず1つ星だらけの本は買いません。かといって5つ星だらけの本も買わないのです。あまりにも高評価に偏っているのは、ほぼステマと見て間違いないからです。
「受け手側」の姿勢が問われている
このように消費者をカモにすべくさまざまな策を講じている企業のマーケティングを、一概に責めることはできません。ただ「同じ人が大量の本に同時に推薦文を寄せている」「ポジティブな評価に偏りすぎている」といった事態の不自然さに気づけるというのは、賢い消費者の1つのあり方でしょう。
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