1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

70年代生まれ団塊Jr.世代が今なお割を食う事情 一発逆転狙う「地獄のスパイラル」の行く末

東洋経済オンライン / 2024年6月22日 9時30分

しかし当然ながら、全員が勝間和代になれるわけではないし、全員がホリエモンになれるわけでもありません。夢は早々に打ち砕かれることになり、そこで台頭してきたのが、夢やぶれてくすぶっている一発逆転マインドをカモにするビジネスでした。

たとえば情報商材本を買って読むと、そこには「あなたもこの情報商材を売って儲けましょう」とある。こうして、自分たちがカモにした人間を、今度は誰かをカモにする人間に変えるビジネスモデルがみるみる広まりました。

この構図の中では、カモは一方的な被害者ではありません。「勝ち組」の席を巡って競争している、地獄のような「カモり・カモられ」スパイラルができあがってしまいました。しかし、それも今では変わりつつあるようです。地獄のスパイラルも行くところまで行き着くと世代間の自浄作用が働くのか、今は「自分だけが生き残ればいい」のではなく、仲間を大切にし、助け合いやシェアを重んじる機運が高まっているのです。

平成の世の30年間、ずっと続いてきた「カモり・カモられ」の社会構造から、日本はようやく脱しようとしていると私は認識しています。

「複雑な世界観」を磨く

本書『全員“カモ”』には「深遠さを装ったデタラメ」という言葉が出てきます。何か深いことを言っているようで、実は中身が空っぽな言葉を信じやすい。重要な判断においても直感的で、分析的な思考に長けていない。そういう人はカモにされやすい。

そこでも思ったことですが、カモにされやすい人は、総じて「単純な世界観」で生きています。前編で述べたような、テレビのワイドショーに出ている「自称・専門家」の言葉を鵜呑みにする、陰謀論にハマる、他人の(しかも大半は運による)成功譚が自分にも当てはまると信じる、書籍の帯の推薦文やECサイトのレビューを妄信する……すべて物事を極端に単純化するクセがあるばっかりに陥る落とし穴と言っていいでしょう。

世の中は複雑です。一見、単純な問題でも、いざ解決しようと思うと「あちらを立てればこちらが立たぬ」というケースはザラです。そんな面倒臭くてややこしい世界を、面倒くさくてややこしいままとらえ、理解しようと努めること。安易な正解に逃げ込まず、「正解が出ていない」というグレーな状態に耐えながら思考し続けること。ものの見方の「射程」を伸び縮みさせながら世の中のさまざまな事象を眺めてみること。

このように「複雑な世界観」を磨くことが、ますます複雑化、多様化する社会で、「隙あらば人をカモにしたい勢力」にからめとられずに生き抜く一番の防衛策ではないでしょうか。

(構成:福島結実子)

佐々木 俊尚:作家・ジャーナリスト

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください