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ジャカルタ鉄道新線「日本支援で建設」決定の裏側 JICA現地事務所長に聞く「東西線プロジェクト」

東洋経済オンライン / 2024年6月22日 7時30分

抵抗勢力は「運輸省鉄道総局」

――東西線のL/A調印、ようやく決まったかというのが正直な感想です。そして、現状の南北線と同様の実施体制で建設が決まり安心しました。大変長い交渉の時間を要したと思います。

安井:E/S借款が結ばれたのが2015年で、インドネシア側での予算承認が遅れたり、コンサルタントを選定するにあたっての調達委員会の設置が遅れたりということもあり、コンサルタントが決まったのが2020年だった。それで少し遅れてしまったというのがある。ただ、その後は比較的大きな遅れはなかった。実施体制を検討するところは検討していたが、それほど大きな遅れというわけではない。

――実施体制は、コンサル契約が終わった後に決めるのですね。

安井:2020年くらいから始まった。東西線はDKIを出るので、州営企業であるMRTJ(ジャカルタ地下鉄公社)は今の法令だと州外の末端区間ができないということで、どういった体制が適当かということを決めるためのサポートも行ってきた。しかし、結局誰も決められないという状態が続いて、2023年後半くらいから、DKIのほうからMRTJにやらせたいという話が出てきた。

われわれも、いや個人的には、MRTJはJR東日本や東京メトロの知見が集約されているような事業体なので、そこがやってくれると非常にいいんじゃないかなという思いがあった。DKI知事代行のヘル氏はジョコ大統領に比較的近いという理解もあるので、知事代行の動きで一気に実施体制が固まるかなと。

昨年(2023年)の今ごろの頭痛の種は実施体制が決まらないということだった。実施体制が決まらないとL/A調印に持っていけない。そこでDKIと話をして、抵抗しているのは運輸省鉄道総局(DGR)であるということで運輸大臣のブディ氏もサポートしてくれることになり、大臣がゴーサインを出して進めることになった。

ただ、DGRが審査時の合意議事録についても最後まで抵抗して、その中で運輸大臣は署名式をやろうと(2023年11月)。審査のドキュメントの署名式なんて普通はやらないのだが。その後もいろいろあり、正式要請が出てここに至ったという感じだ。

運輸省が抵抗した理由は

<筆者解説>ジャカルタMRTプロジェクトの実施体制は、南北線着工時にも長らくの間議論され、なかなか決着がつかなかったという経緯がある。本来、円借款は政府間契約で、政府機関が実施するプロジェクトを対象とするものである。地方自治体(この場合はDKI)は供与の対象としては異例である。よって、借款の負担方法や返済方法などをめぐり、政府とDKIの間の折衝に時間を要した。

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