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ジャカルタ鉄道新線「日本支援で建設」決定の裏側 JICA現地事務所長に聞く「東西線プロジェクト」

東洋経済オンライン / 2024年6月22日 7時30分

しかし、旧態依然とした組織で満足な管理・運営能力があるとは必ずしも言えない運輸省や国鉄(KAI)には任せられないという事情もあり、MRTプロジェクトの実施機関は政府機関ではなく、DKIの下部機関として設置されたMRTJ社となった。日本側から見ても、運輸省が実施機関となればインドネシア国産品の使用や、EN(欧州規格)をはじめとする運輸省の規格を要求される可能性が高く、本望ではなかった。

一方、運輸省は本来自らの利権になり得たMRTプロジェクトをDKIに取られてしまう形となった。そこで、東西線では路線がDKIの外にまたがることを盾に、積年の恨みを晴らさんとしていたわけだ。2022年頃には、東西線の第一期区間がDKI内のウジュンメンテンから隣接する西ジャワ州のメダンサトリアまで、当初予定より1駅伸びるという不可思議な動きすら発生した。

――運輸大臣と知事代行の力があってもDGRは抵抗するんですね。

安井:私が聞いているところでは、DGRの総局長がもうあきらめろと下に言ったりして、それでもすんなり決まらなかった。結局国から正式要請は出たが、第一期区間も1駅だけ西ジャワ州に出る区間があるので、経済調整大臣令を少し変える必要があった。それで少しはみ出す区間も含めてMRTJが実施できるようにした。それが終わって、やっと抵抗勢力が抑えられていった。

――先ほど、今の法令ではできない部分があるという話がありましたが、その部分ですね。

安井:そう。そしてもう一つ、東西線のフェーズ2は完全にDKIの外に出るが、その部分は議論を先送りすることになった。私などはMRTJができればと思うが、DKIの外に相当出てしまうので、MRTJが関与しながらジョイント的な会社をつくるのかどうかなど、いろいろな議論がこれから出てくるのかなと思う。

円借款供与後のお金の流れは?

――南北線の実施体制を東西線のフェーズ1に引きつぐということですが、国と州の負担比率や、円借款供与後のお金の流れなどのスキームを簡単に説明いただけますか。

安井:スキームとしては中央政府が49%、DKIが51%の割合で負担している。実施主体は一応DGRだが、その下に「インプリメントエージェンシー」というのを置いている。それをDKIにして、実際にはDKIが主体的に行っている体制になっている。

お金の流れは、JICAからインドネシアの財務省に入って、そこから中央政府の負担分はグラント(無償資金:返済不要の補助金)としてDKIに流れる。DKIの負担分はオンレンディング(転貸:中央政府からDKIへの貸付)として流れる。そしてDKIからMRTJにお金が行って工事が行われるという形だ。

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