プーチン訪朝でもロ朝の軍事的重要性は薄い インフラ整備など経済協力も発展・拡大するか未知数
東洋経済オンライン / 2024年6月22日 13時0分
それだけではありません。このような技術移転は核拡散を助長するものです。反対に、核拡散と関係の薄い技術や、そう簡単にはまねできない技術を移転する可能性はあります。
例えば、潜水艦建造技術や偵察衛星に関する技術については、ロシアは北朝鮮に移転できます。それでも、ロシアの立場から見て最も合理的な態度は、北朝鮮から砲弾と弾薬を輸入する際に、技術を移転してあげることよりも、そのまま単純に外貨で決済することでしょう。すなわち、ロシア側は砲弾と技術移転の交換という物々交換的な取引よりは、純粋に受け取った砲弾に対しておカネをあげることを好むということです。
――プーチン大統領は訪朝の直前、北朝鮮・朝鮮労働党の機関紙『労働新聞』に「ロシアと朝鮮民主主義人民共和国:年代をつないでいく友好と協力の伝統」と題する文を寄稿しました。これは彼の外交戦術としては珍しいように見えますが。
そこはわかりません。ただ、この寄稿はロシア側が提案したというよりは北朝鮮側が提案したものだと思えます。それは、2019年に中国の習近平国家主席が訪朝した際に、習主席が『労働新聞』に寄稿したことを想起させます。
それを考えると、北朝鮮は2019年当時の中国からの国賓級訪問と同レベルのことをやりたくて、今回もロシア側に同じ要請をしたものだと考えられます。
――金正恩総書記は首脳会談後の記者会見で、「朝ロ関係において最も強力な条約の誕生」「同盟関係という新たな高い水準に到達した」と発言しました。
北朝鮮の最高指導者として、これ以上のことを言えたでしょうか。当然、彼はこのような条約をとても必要としており、自ら激賞するほかなかったでしょう。
とはいえ、客観的に言えば、この条約の基本内容は1961年の条約とほぼ同じです。この条約を「最も強力な条約」だとみなすよりは、ほぼ30年間効力を失っていた友好善隣条約の復活と見たほうが正確だと思います。
無視される北朝鮮制裁
――訪朝時にロシアのペスコフ大統領報道官は、「ロシアと北朝鮮の2国間関係に関する制裁の影響の低減に関するメカニズムを創出する弾みを与え、このメカニズムが始まる」と言及しました。国連制裁などの制裁は、ロシアと北朝鮮の間では無視される、ということになりますか。
ロシアは国連の安全保障理事会常任理事国です。そのため、国連で決議された北朝鮮に対する制裁を露骨に否定して、かつそれを破ることを公の場で宣言することは不可能です。
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