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「デキがイマイチで無料」ラヲタ店主の異様な熱意 レギュラーメニューがない異色ラーメン店の背景

東洋経済オンライン / 2024年6月28日 11時0分

当時提供していたのは鶏清湯の塩ラーメンとスパイスを使った味噌ラーメン。もともとものづくりに興味があったことと、大好きだった「渡なべ」の唯一無二のラーメンへの憧れから、自分が食べて美味しいというよりも他にないものを作りたいという思いが先行していた。

塩ラーメンにはハーブやスパイスを使ったソースを上から垂らし、一部ではそのギミックが褒められたが、ハッキリ言って賛否両論が激しいラーメンだった。オリジナリティを求めすぎてバランスが取れていなかったと道理さんは振り返っている。

しかし、賞賛の口コミも多く、それがラヲタ(ラーメンヲタク)に一気に広がっていき、次から次へとお客さんが来てくれるようになった。

儲けはあまりないがお店がつぶれるほどではないと思っていた矢先、道理さんにチャンスが訪れる。横浜・関内の駅前の商業施設「セルテ」にできる「ラーメン横丁」に出店しないかという誘いだった。

嬉しい声掛けに、道理さんはお店の移転を決意する。こうして2018年6月、セルテに移転した。

しばらくは元住吉の味のまま提供していたが、1年経った頃思い切って味をリニューアルすることにした。ユニコーンの出身である広島のラーメンを提供することにしたのである。「小鳥系」と呼ばれる広島のあっさりとしたラーメンが好きだった道理さんはその味を再現し提供を始めた。

このラーメンにお客さんのリアクションがとても良く、ラヲタだけでなく日常使いのリピート客が増えてきた。このまま認知が広がれば売上も安定してくるかなと思われた頃、コロナが直撃する。

関内はビジネス街で昼間のお客がいなくなり、横浜スタジアムでの野球の試合やコンサートもなくなった。全くお客が入らない日々が続く中、道理さんは2度目の移転を決意する。こうして2020年10月、大岡山に移転し、店名は「なるめん」とした。

「店名を変えることで移転ではなく“新店”という扱いになり、『TRYラーメン大賞』(ラーメンの年間アワード)に引っかからないかなと考えたんです。店名もラーメンも変えて、心機一転小さなお店をスタートしました」(道理さん)

豚骨魚介に手打ち麺を合わせ、ラー油を加えたクセのある一杯を仕上げた。道理さんとしては自信のある一杯を提供していて、これなら『TRYラーメン大賞』の部門賞を狙えるのではと思っていたが、結果は箸にも棒にも掛からなかった。

もっと言えば、部門賞で該当したであろうMIX部門において掲載されたのはわずか1店舗のみで、他は該当なしとなっていた。自分のラーメンは相手にもされていないと感じ、道理さんは完全に心が折れてしまった。

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