「デキがイマイチで無料」ラヲタ店主の異様な熱意 レギュラーメニューがない異色ラーメン店の背景
東洋経済オンライン / 2024年6月28日 11時0分
「これで自分はラーメン業界の土俵から降りることを決意しました。ラヲタに注目されるお店にはせず、近隣のお客さんと常連さんのみを大事にしていこうと決めました。ここから『なるめん』はラヲタには来づらいお店にすることにしたんです」(道理さん)
ラーメン業界において、新店はラヲタが口コミを広げることによって、一気に話題店となり、上手くいけばネットを通じた集客が期待できる。アワードを受賞したお店も、ラヲタの口コミで話題になったところが数多い。しかし、ラヲタの意見に左右され、苦しむ店主も少なくなく、人気店になっても様々な苦労がある。
そういう意味では、その土俵から降りることは昨今の風潮から見れば逆張りでありながら、地域のラーメン店として生きるという「原点回帰」的なものとも言えるだろう。
「脱ラヲタ」が独自の店作りに繋がった
まずはレギュラーメニューをなくした。ラーメン店といえばお店の看板メニューが必ずあるものだが、レギュラーをなくすことによって毎週違うラーメンを提供するお店になった。
さらには、固定の営業時間をやめた。毎日X(旧Twitter)で営業開始直前に今日のラーメンと営業時間を呟く方式に変えた。
元住吉時代から限定ラーメンは月イチで作ってきていて、経験値としてレシピの蓄えはあった。元々ゼロイチのものづくりが好きだということもあり、同じメニューを作り続けるよりは毎週違うものを作ったほうがストレスが少ないというのもあった。自分らしい、店の在り方の模索は続いた。
営業時間に余裕が出るようになって、道理さんは再びラーメンの食べ歩きを始めた。もともとはインプットがないとアウトプットができないからという理由で再開させたが、実際に食べ歩いてみるとその楽しさに改めて気づいた。
「喜多方ラーメンを作ろうと思ったときに、そういえば現地に行ったことがないことに気づいたんです。そこで“研究”という名目で回り始めたのですが、どんどん楽しくなってきて、そのまま自分がラヲタになってしまったんです。これは完全に『渡なべ』の渡辺樹庵さんの影響です」(道理さん)
道理さんが専門学校時代から大好きだった「渡なべ」の店主・渡辺樹庵さんは、ラーメン店主の中でも屈指のラヲタとして知られ、全国のラーメン店をくまなく食べ歩いている。地方の細かなご当地ラーメンにも傾倒していて、その味を再現しイベントやラーメン施設で提供することでもよく知られている。
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