日本の海外支援、「都市鉄道」こそ強みが生かせる ジャカルタ地下鉄が日本式を広める「先生」に
東洋経済オンライン / 2024年6月28日 7時30分
5月13日、国際協力機構(JICA)は、インドネシア政府との間で「ジャカルタ首都圏都市高速鉄道(MRT)東西線事業フェーズ1(第一期)」向け円借款貸付契約(L/A)に調印した。
2019年に開業したジャカルタMRT南北線に続いて本邦技術活用条件(STEP)が適用され、土木工事のみならず、信号システムや車両に至るまで日本の技術が用いられることになる。当初予定されていた2024年8月の本体工事着工は厳しい情勢だが、2025年末から2026年初めに着工し、2031年開業を目指す。
南北線の成功を受けて、世界の開発ドナー(援助国・機関)がこの東西線プロジェクトに注目している。他国のドナーをいかにしてまとめてきたのか。そして、東西線が動き出した今、日本が進むべき次なる道筋は――。前編(2024年6月22日付記事「ジャカルタ鉄道新線『日本支援で建設』決定の裏側」)に続き、調印実現に向けてインドネシア政府、そして世界のドナーと調整に奔走してきた安井毅裕JICAインドネシア事務所長に聞いた。
将来は欧州と協調融資の可能性も
――2022年末頃、ジャカルタMRT東西線のフェーズ2(今回調印した区間の次のプロジェクト)に対し、EIB(欧州投資銀行)とUKEF(英国輸出信用保証局)が興味を示し、JICAに接触してきたとのお話でした(前編参照)。
その後、2023年5月に「EIB、UKEF、AfD(フランス開発庁)、KfW(ドイツ復興開発金融公庫)とJICA間のMRT東西線開発における連携MOU」(覚書)が締結されています。前述の動きがこちらにつながったのでしょうか。欧州が関与するこのMOUの目的は何でしょうか。
安井:(欧州側の提案を)ただ断るだけだと恨みを買う。われわれもスラバヤでMRTのプレFS(「インドネシア国地方主要都市における都市公共交通システムに関する情報収集・確認調査」)をやっていたので、UKEFには代わりにそちらで連携すればいいのではということで、お互いにハッピーな形で進めようということになった。
一方で、コミュニケーションだけにしておくと、担当者が変われば話も変わってくる可能性もある。そこで紙にまとめておいたほうがいいかと思ったわけだ。その時、フランスも関心を持ちそうとか、KfWもいるとか、話をしておかないと後から入りたいと言われても困ってしまうので、最初から巻き込もうと。
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