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日本の海外支援、「都市鉄道」こそ強みが生かせる ジャカルタ地下鉄が日本式を広める「先生」に

東洋経済オンライン / 2024年6月28日 7時30分

――ジャカルタは首都で予算があるので今回のMRTのようなスキームで実施できますが、地方都市は難しいのではないでしょうか。

安井:スラバヤの場合、地元の東ジャワ州政府にお金を貸し付けないと難しいだろう。また、中央政府の負担をどうするかというところで、政府がどれくらい重要視してくれるかどうか次第だ。

ジャカルタMRTも、コンパス(インドネシアの日刊紙)か何かに費用を返済できるのかと書かれたことがある。地下も掘らないといけないし、その割に運賃は普通の鉄道に揃えなければならず、なかなか難しい。そこは税金を投入して、できるだけ力のある方に負担してもらうしかないかなと。

――インドネシアの都市鉄道は運賃が安いので、もっと上げてもいいと思いますが。

安井:あとはどれだけ利用してくれるか。政府の負担を減らそうと考えれば運賃を上げればいいが、プロジェクトの効果を高めようとしたらタダのほうがたくさん乗る。考え方にもよるが、安いほうが社会的な公正は高まるのかなと思う。

日本の強みを発揮できる都市鉄道整備

<筆者解説>高い運賃設定から独立採算が可能と判断されたジャカルタ―バンドン間の高速鉄道は政府負担なしでPPPスキームによる建設、運営となった。一方、都市鉄道は低所得者の足を守るという理由から極めて低運賃に抑えられており、運賃の半額相当を中央政府やDKI(ジャカルタ首都特別州)からの補助金によって賄っている。税金投入なしでの運行は不可能だ。

つまり、建設費の返済は鉄道の収益と関係なく国の予算で行うことになる。そのような背景のある都市鉄道の建設には、低金利借款が不可欠だ。円借款は他国の商業ローンなどと比べると金利が極めて低く、さらに日本の技術を吸収できることが大きなメリットだ。政府財政に余裕があり、かつ人口密度が非常に高いインドネシアは、円借款による鉄道整備にマッチしている。PPP万能論が席巻する中ではあるが、この点はしっかり相手国側に説明していかなければならない。

当然ながら返済能力には限度があり、一気に数百kmの巨大路線を建設することは不可能だ。国のアイコンになるような大プロジェクトを進めることはできないかもしれない。しかし、都市鉄道整備は引き続き日本が中心となり、地道に、そして確実に進めていくことになるのは間違いない。安井所長の一言一句からは、そんな強い意志を感じた。今後の展開にも期待していきたい。

高木 聡:アジアン鉄道ライター

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