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日本の海外支援、「都市鉄道」こそ強みが生かせる ジャカルタ地下鉄が日本式を広める「先生」に

東洋経済オンライン / 2024年6月28日 7時30分

そういった点から、スラバヤ市や東ジャワ州は東西線を先にやりたいと言い出している。そこで、われわれとイギリスとの間では、東西線をUKEFでやってくださいということにしている。彼らがやるとなると、(路線の仕様は)標準軌の第三軌条となる。彼らはインフラ部分全体をやることになるが、UKEFと話しているのは運営会社を作らないといけないということ。そういうノウハウはUKEFにはほぼない。だから、そこはJICAのほうでサポートしていきますよ、と。

つまり何を考えているかと言うと、MRTJ(ジャカルタMRTを運営するジャカルタ地下鉄公社)をその先生に使いたい。MRTJは日本のノウハウをつぎ込んで作られ、日本的なオペレーションをしている。同じようなオペレーションをスラバヤでやってくれれば、まさにソフト部分についてはジャカルタ経由でスラバヤへ展開することになる。日本らしいところを打ち出せる協力をやっていければいいかなと思う。

<筆者解説>MRTJが日本のノウハウを凝縮しているという中での面白いエピソードがある。同じく円借款で進めているベトナム・ホーチミンMRTのトレーニングでのことだ。基本的には日本が実施しているが、一度ジャカルタのMRTJで行った。すると、ホーチミン側からMRTJによる研修がよかったという声が出て、もう一度行うことになったのだ。

ホーチミン側からすれば、日本の研修は素晴らしいが、自分たちのはるか先を行きすぎているという面がある。ホーチミンとは数年の経験差しかないが、しっかりとしたオペレーションをやっている。同じ東南アジア同士ということから身近に感じることができるMRTJから学ぶことは多いという。

すでにMRTJは他都市の支援を行うことに誇りを持っており、バングラデシュのダッカもやらせてくれ、ほかの都市もないかという相談がJICAに来ているそうだ。現にMRTJ自らもインドネシア国内でパレンバンのLRTなどと提携して支援している実績がある。そういう意味で、日本の支援でジャカルタに鉄道会社をゼロから作ったのは大いに成功している。

MRTJの社員は旧来のインドネシアの鉄道会社とは一線を画す。当初の幹部は、石油会社をはじめとする有力企業から流れてきた人たちがほとんどを占め、シンガポール系インドネシア人が多数活躍した。今や、MRTJはジャカルタの就活大学生の人気企業ランキング上位に位置するほどになっている。MRTJがインドネシアの地方都市、そしてアジア各地に都市鉄道の運営ノウハウを展開していくことは、立ち上げに関わった日本の関係者も鉄道マン冥利に尽きるのではないだろうか。

都市全体を考えているのは日本だけ

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