映画館にシニア呼び戻す「ベルモンド作品」の魅力 仕掛け人の江戸木純氏が語った企画の経緯
東洋経済オンライン / 2024年6月28日 14時30分
第2弾も、第3弾も大勢来ていただきましたし、待っていてくださる方もいるんですよね。新宿武蔵野館の若いスタッフも、ベルモンドは素晴らしいと楽しみにしてくれていますし。
この企画自体、実は30年ぐらいかかって実現したものなんです。元々VHSビデオの時代に、映画の買い付けの仕事をしていたんですが、その時はジャン=ポール・ベルモンドほどのスターであってもVHSになってない作品が案外あったんです。
僕たちの世代はジャン=ポール・ベルモンドをスターとして知っている世代なんですけど、1970年代の後半あたりから、彼の映画は日本で当たらなくなったんです。
フランスではヒットでも日本では当たらず
フランスでは1980年代もマネーメイキング・スターで、フランスの国宝と呼ばれるほどの大スターなんですけど、映画自体はフランス版のスティーヴン・セガール映画みたいなゴリゴリのアクションやドタバタコメディーで。
それがフランスでは大ヒットしていたんですが、そういう映画が日本に入ってこなくなった。たまに日本で上映しても全然客が入らないから、「ベルモンドは当たらない」というのが日本の興行界の常識になってしまった。
でも僕はベルモンドが好きだったんで、なんとか日本で上映できないかと思っていたんですが、フランスでは超一級のタイトルなので安くしてくれないわけなんです。だから誰も買わなくなっちゃって。どんなに有名な人でも、作品が観られない状態が30年も、40年も続くとみんな知らなくなってしまいますよね。
だからベルモンドをやりたいとずっと言ってきたんですけど、全然実現できずにいた。それから20年、30年とたったあたりで、フランスで2Kリマスターがつくられるようになってきて。
それでキングレコードの担当の方に「こういうのできないですかね?」と話したとき、「どうせやるなら、まとめてやったらどうでしょう?」と提案していただいて「傑作選」がスタートしたんです。
実は第1弾のときの目玉作品はフィリップ・ド・ブロカとベルモンドの傑作『おかしなおかしな大冒険』になるはずだったんです。
もともとこれはワーナー・ブラザースが日本の配給権を持っていた作品なのですが、映画が当たらなかったこともあり、VHSもDVDも発売されなかった。
その後、権利が、ワーナーからフランスのスタジオカナルという会社に戻ることが決まったので、そのタイミングでこの作品を第1弾「傑作選」の目玉にしよう、ということになったんですが、結局権利が移動するのに4年以上かかってしまい、それまで上映ができなかった。
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