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「藤井聡太を"人間"にした男」伊藤匠の背負う宿命 「同世代棋士が無敵の王者を破ったこと」の意味

東洋経済オンライン / 2024年6月29日 14時0分

2021年、四段だった頃の伊藤匠新叡王(筆者撮影)

2024年6月20日、将棋界に衝撃が走った。

【写真】“ゴロンと寝転がる”、伊藤匠新叡王の貴重なオフショット!

無敵の王者・藤井聡太八冠が初めてタイトル戦で敗れ、全冠の一角である叡王を失ったのだ。5番勝負を3勝2敗の接戦で制したのは、藤井と同学年である伊藤匠新叡王。2人は小学3年生のときに全国大会で対戦し、負けた藤井が号泣した。

伊藤は将棋ファンにはデビュー時から知られた存在だが、一般的には今回初めてその名を耳にした人も多いだろう。

将棋界400年の歴史で最強の天才と言われる藤井聡太。彼に勝った伊藤匠とは、果たしてどんな棋士なのか。

藤井に「負けてほしいと思っていた」

伊藤は2002年10月10日生まれの21歳。5歳のクリスマスプレゼントに将棋盤と駒をもらったのが将棋との出会いだった。

その3カ月後から、宮田利男八段が開いている東京・三軒茶屋将棋倶楽部に通い始める。将棋の才能は目覚ましく、小学3年のときに全国小学生将棋大会で準優勝している。このときの準決勝では藤井聡太に勝ったが、2人が小学生の大会で対戦したのはこの一度だけだった。

藤井は小学4年で棋士養成機関である奨励会に入会した。伊藤はその翌年に5年生で入会する。奨励会は関西と関東に分かれているため、2人が顔を合わせることはなかったが、伊藤は先をいく藤井をずっと意識していた。

2016年10月1日、藤井は史上最年少でプロデビューを果たした。伊藤は奨励会員の仕事である記録係を、藤井の対局で何度か務めている。

藤井が中学3年で棋戦初優勝を飾った第11回朝日杯将棋オープン戦でも、伊藤は記録係として最も間近で対局を観ていた。そのとき藤井の優勝が近づく中、「負けてほしいと思っていた」と正直な心情を吐露している。

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伊藤が棋士になったのは2020年10月1日、藤井に遅れること4年だった。「早く公式戦で対戦したい」と願ったが、藤井はすでにタイトル2つを持ち、新人の四段棋士が当たるまでには、予選をいくつも勝ち上がっていかねばならない存在になっていた。

ここまでの2人の経歴を並べると、伊藤が平凡な棋士のように感じるかもしれない。だが藤井が特別すぎるだけであって、伊藤もまた“天才棋士”であることに疑いはない。

17歳でのプロデビューは、トップ棋士になる期待値が十分に高いものであったし、また初の通年参加となった2021年度には新人王戦で優勝、そして藤井の5年連続勝率1位を阻止して年間勝率1位にも輝いた。2023年度には最多対局賞、最多勝利賞も獲得している。

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