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4浪立命館「漆職人」彼の"後悔し続けた"浪人生活 一方で「無駄ではなかった」とも語る彼のいま

東洋経済オンライン / 2024年6月30日 8時0分

「大学のときはなんとなく町家関係の仕事に就きたいと思っていましたが、建築の知識がないのでそういうところに入るのは難しいと思い、卒業する直前まで何も動きませんでした。

それでも卒業式の次の日には仕事を探さないといけないなと思って、自分の足で探しに行ったら、銘木屋を紹介してもらいました。話を聞きに行って、なぜかもうその日から働き始めていました。そこでしばらく木工の仕事をやってから、家具屋に転職しました。

その傍ら京都で木を扱っている仲間たちとスプーン教室などのワークショップを開き、一緒に活動することが増えました。その仲間たちは京都という土地柄、家具でも漆を使っている人が多く、彼らと話す中で、漆というものの魅力に惹かれ、漆を家具や内装、インテリアにも取り入れていけたら面白いのではないかと思ったのが、漆の世界に入ろうとした大きなきっかけです」

こうして家具屋での4年間の勤務を経て、無給で毎日カレーを食べる生活をしながら、漆の工房で2年間修行した後、工藝の会社に就職し漆塗りの職人として活躍しているK.Rさん。

彼は4年間の浪人生活を送りましたが、48歳になった今、浪人の経験を決して肯定的には捉えていないようです。「4年間甘え続けていたツケを感じている」と語る彼は、浪人してよかったことについて「見いだせる部分がなかなか出てこない」と語ってくれました。

「2年修行した後に最初は工房を自分で開こうと思っていました。ただ、自分のセンスを感じなくて、それで食べていくところまで持っていける体力と財力がありませんでした。

それでも漆は特殊な技術で、それを生かしたいという思いがあったので工藝の仕事を探して、今に至るまで15年以上、ずっと工藝の会社に勤めながら生活を続けています。

この世界に遅くから飛び込んだのもあって、いろんな決断をするうえで『もうあと4年早く今の仕事に就いていればよかったな』と感じることが最近、多くなりました。

4年くらいすぐに取り戻すつもりで努力はしてきたつもりなのですが、現状取り戻せていないと感じるのは、後悔の念をいまだに引きずっていて、前向きになれていないからだと思います」

今の家族がいるのは4年間の苦労のおかげ

「2浪で早稲田に入ったラグビー部の親友と最近もたまに会うのですが、彼は子どもたちに『1~2年は遠回りしても全然遠回りではない』と言っているそうです。彼がそう言えるのも、1~2年の間しっかり受験勉強したことで、今の自分の立場を得て、ある程度満足した生活を得られているという自負があるからだと思います。

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