多摩モノレール延伸区間「幻の鉄道計画」の顛末 政界巻き込む事件に発展「武州鉄道」の壮大構想
東洋経済オンライン / 2024年7月5日 7時0分
つまり、楢橋には免許に関する職務権限があり、賄賂を受け取ったとされたのである。
一審で楢橋、滝嶋にいずれも懲役3年の実刑判決が言い渡され、控訴審(東京高裁)で楢橋に懲役2年執行猶予3年、滝嶋に懲役2年の有罪判決が確定した。なお、平沼らの特別背任等は無罪となった。
本事件に関しては、岸信介から弟の佐藤栄作(後に首相)の将来を託されていた党内実力者の楢橋が、池田首相の再選を阻む者として、池田陣営によって陥れられたのだとか、いろいろなことが言われたようだが、どう見ても楢橋の脇が甘かったとしか思えない。
武州鉄道、もし開業していたら?
こうして幕を閉じた武州鉄道事件であったが、仮に同鉄道が開業にこぎ着けていたならば、どうなっただろうか。参考になるのが、西武秩父線(1969年10月に開業)の収支である。2013年に西武ホールディングスが米投資会社「サーベラス」からTOB(敵対的な株式公開買い付け)を仕掛けられた際、「不採算路線」として同線などを廃止するよう求められたのは記憶に新しい。
旧・名栗村付近の山岳路線は収益性が低い割に維持費がかかることなどからすれば、武州鉄道という弱小資本が路線を維持するのには無理があるし、採算性を考えれば西武が買収したかも疑問である。
一方で、路線を吉祥寺から東青梅までに縮小して開業したならば、青梅線・西武国分寺線・中央線を結ぶバイパス線として、沿線開発や既設路線の混雑緩和の観点から成業した可能性はある(ただし、1968年に西武拝島線が玉川上水駅から拝島駅まで延伸・開業していることから競合関係になっただろう)。だが、そもそも武州鉄道は、埼玉銀行という資金源があればこそ成立する計画だったのであり、その点で最初から矛盾を抱えていたのである。
森川 天喜:旅行・鉄道ジャーナリスト
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